カツマ

ドラゴン・タトゥーの女のカツマのレビュー・感想・評価

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
3.9
漆黒のシンセリフ、カレンOのヴォーカルが、スタイリッシュに画面上を侵食するインダストリアルな移民の歌。トレント・レズナーのサウンドトラックがオープニングから炸裂するハリウッド版ミレニアムの一作目。原作と同様スウェーデンを舞台にした監獄のような冷気の中、過去に縛られた島で暗躍する残虐な殺人犯の影。失われた一人の少女を巡り、記憶と記録から掘り起こされた真実の謎を解き明かせ。

ミカエル役にダニエル・クレイグ、リスベット役にルーニー・マーラというキャスティングは正に完璧。まだ主演クラスではなかったルーニー・マーラが一気に注目された作品でもある。監督は猟奇サスペンスの名手デヴィッド・フィンチャーと盤石の布陣。原作のクオリティを具現化するには十分な舞台が整えられている。

〜あらすじ〜

雑誌『ミレニアム』の発行責任者ミカエルは、実業家ヴェンネルストレムの暴露記事が不正報道と断定され、裁判で有罪判決を受けていた。窮地に立たされたミカエルはミレニアムを去る決意を固めていたが、そんな切迫した状況の中、新たな依頼が舞い込む。
その依頼人は大企業の元会長ヘンリック・ヴァンゲル。その依頼とは40年前に失踪して死んだと見られているが迷宮入りとなった、当時16歳の姪ハリエットの事件を解明してほしいというものだった。ミカエルはヘンリックからヴェンネルストレムの弱点を入手するという条件を提示され、この依頼を引き受けることにする。
一方、ヘンリックは事前にミカエルの身辺調査を凄腕のハッカーに依頼していた。その依頼を実行したのはリスベット・サランデル。そこでミカエルは、見事なハッキング能力で自身を丸裸にしたリスベットを助手に指名しようと思い付く。

〜見どころと感想〜

原作を忠実になぞりながらも、デヴィッド・フィンチャーらしい不気味で不穏なカメラワークが、この映画をよりスタイリッシュに見せている。
スウェーデン版の映画化作品と違うところは、俳優陣のビジュアルが断然整っているところと、恋愛要素がほんのりと強いところだろうか。スウェーデン版では猟奇殺人ミステリへと焦点が当たっているため、ミカエルやリスベットのその後はサラッと描かれているが、こちらは事件後の二人の関係性にもしっかりの言及してくれていると思う。

スウェーデン版、ハリウッド版、どちらもストーリーは同じなのに、それぞれの違いを発見しながらも楽しめる内容。リスベットもルーニー・マーラ版、ノオミ・ラパス版と全くの別物で、各々の個性が作り出した新たなリスベット像を楽しめる。
このハリウッド版の続編でリスベットを演じるクレア・フォイは果たしてこの天才ハッカーをどのように演じるのか。もちろんルーニー・マーラとは別物になるはずなので、クレアが生み出す新たなリスベット像に注目して見ていきたいと思った。

〜あとがき〜

個人的にはスウェーデン版、ハリウッド版、どちらも同じくらいの良さだったかなと思います。どちらも女性の強さをしっかりと描けているし、猟奇的なミステリとしても面白い。

それだけに続編は少し心配でもありますが、まずは劇場に足を運んで確認してみたいと思います。
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