Daisuke

手遅れの過去のDaisukeのレビュー・感想・評価

手遅れの過去(2015年製作の映画)
4.5
[行くぜ]

とある方の感想を目にし、とても面白そうだったので昨夜鑑賞。

この映画はとても面白い構造をしていて、ワンシーンワンカット(長回し)で5つのパートから作られている。
その5つの流れは時間軸も前後していて、鑑賞者はある事件の「過去と未来」の両側面から観測していく。

このワンシーンワンカットがとても面白い。動かない定位置でのワンカットではなく、被写体に寄ったり遠景になったりズームにドリーショットなど多種多様なアプローチで人物を追いかけていく。

この物語の主軸はメルという探偵とドロシーという女性だ。この2人がどういった関係で、どんな結末を迎えるのか是非とも観測してほしい。

先程から「観測」と書いているが、
この映画はその独特なカメラワークから、登場人物に感情移入して鑑賞するような映画ではないように思っているからだ。
時間軸も前後し、何か流れるようなカメラワークはこの映画全体がある種の「走馬灯」のような感覚で見ていた。

そしてなぜこういったスタイルの映画を監督は撮ったのか。
序盤から後半までセリフや情景に「映画」を語るシーンがあり、この監督がいかに映画を愛しているかがわかる。
そしてこの監督もまた、デヴィッドリンチやリチャードリンクレイターといった監督たちのように、「映画とはどういった特性のものか」をとてもよく理解しているような気がする。
全くもって毛色もテーマも違うが「マルホランドドライブ」や「僕が6歳から大人になるまで」といった作品の本質と、この映画はそう大きくかけ離れていないと私は強く思っている。

現実には決して戻る事ができない過去。
現実には決して知る事ができない過去。

ただ、映画だけは、その過去を見る事ができ、そして未来へと繋げる事ができるのだ。

とても身勝手で、なんとも言えない余韻の残る物語だった。
ただ私には、ラストカットの「ある動作」にこの監督の強い意志が見えていた。

「行くぜ、(俺の)映画!」

と。
Daisuke

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