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ウインド・リバーのCisaraghiのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
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見ている方も体の芯まで冷えきったと錯覚するほど寒そうな映画だった。かつては広大で豊かな領土に広がって暮らしていたのに、酷寒で不毛の西部の地に追いやられ、貧困の連鎖に押し込められてしまった先住民。その悲しみと絶望が寒さを媒介にして伝わってくるようだった。彼らの悲劇は今も現在形だ。その事を世界に知らせるための物語だと受け止めた。

現代の西部劇では、ヒーロー役ジェレミーレナーは先住民側に立つ者として描かれ、かつて守られる立場でしかなかったヒロインは先頭に立ち命をかけて戦う。二人の苦いトーンのハードボイルドな演技はシビアで抑制されていて、この悲劇を伝えるのに相応しかったと思う。

テイラーシェリダン監督、ある社会問題に広く目を向けさせるためにはよく出来たドラマ・よく出来たエンターテイメントである必要があるというクリアな認識を持ち、それを見事に成功させるだけの才能と力量を備えた監督だと思った。

宇宙のどこかの星かと見まがうように静まりかえったオープニングの場面、忘れられない。

2010年時点のワイオミング州先住民保留地・ウィンドリバーの人口は26000人余り。平均寿命は49歳(2012年)。病院は2つしかない。アルコール依存が深刻な問題だ。高校を卒業する者は60%に過ぎず、10代の自殺率は州平均の2倍、犯罪率は全国平均の5~7倍(2012年)、失業率は2005年段階で70~80%に上り、その後も変わっていないという。人口の22%は自宅で英語以外の言語を話しているそうだが(2011年)、映画の最後の方にあったように、部族の風習はもう伝承されていないのだろうか…。[出典Wikipedia]
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