カズナリマン

ウインド・リバーのカズナリマンのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
1.1
凡作!ネイティブアメリカン貧困ツアーへようこそ!

いやー足りない!ミステリーとしても、アメリカン・カルチャーものとしても!
2年連続オスカーノミネートされた脚本家テイラーシェリダンの監督デビュー作は、やる気やテーマに演出力も脚本も追っついてない凡作!!と思っちゃいました。
監督してのテイラーシェリダンの才能ですが…
うん、諦めよう。脚本家に徹するのをテイラー兄貴にはオススメしたいゾ!
監督なんて仕事はテイラーの代表作「ボーダーライン」を演出で持ってワンランク上のポリティカル・スリラーにしたてあげた天才ドゥニ・ヴィルヌーヴ叔父貴とかに任せておきましょう!

○一応あらすじ(No Neta-bare)
極寒のネイティブ・アメリカン居留地で起こった女性の不審死事件。
第一発見者のベテランのトラッカー/ハンター、ランバート(ジェレミー・レナー)は、居留地の捜査に不慣れなFBI捜査官、バナー(エリザベス・オルセン)の捜査を手伝うことになるが、ランバートにも悲しい過去があった…

ネタバレ・ネタバレ・ネタバレ
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ネタバレ・ネタバレ・ネタバレ
ネタバレ・ネタバレ・ネタバレ
ネタバレ・ネタバレ・ネタバレ

いやー気負いましたね、シェリダン監督!
なんか色々ありすぎるので、箇条書きにしよっと。

問題①
テーマである「ネイティブアメリカンの女性行方不明」問題を客観的に伝えようと気負うあまり、居留地に足を突っ込んだ白人キャラ、ランバート(ジェレミーレナー)を主役にしたのでしょうが…
結果的にこれが間違いだったと思っちゃいました!
彼は娘を同じく殺害された関係者として、居留地での問題をFBIのバナーに説明するのですが…
何でしょう、いくらネイティブの女性と結婚していたとはいえ、ランバートってやっぱり部外者感が強いんですよねーー。
居留地のネイティブたちと仲は良いけど、白人として居留地の外に近い彼って観客には親切な「説明役」だと思えるんですが、居留地のネイティブ達の貧困や虐げられた地位を描くなら、主役のどっちか(ランバートかバナー)をガチなネイティブに設定した方がよかったんじゃないですかねえ?
「ネイティブの女性と結婚したけど、今は離婚している男性」って、「明日この地獄を出ていける」感強いんですよねーー。
かつて「サンダーハート」って居留地の殺人事件を追う映画がありましたが、こちらはバル・キルマーがネイティブアメリカンのグラハムグリーン(本作にも出演!)と組んで事件を調べるストーリーでした。事件のコアにあったものは主役の一人であるグラハムに直結する問題であり、彼の悲しみと決断が重く、辛かったのを覚えてます。
せめて、ランバートがネイティブアメリカンのハンターだったら…本作はもっと重たいものになったと思うんですよねーー。

問題②
お話は「正体不明の犯人」を追う捜査になるのですが…それを追う過程でランバートは観客目線のFBI(バナー)を次々と「ネイティブアメリカンの苦しみの源」に案内して行きます。
いや、捜査として理にかなってるんですけど、あからさまな「ほら、こんな問題があって、皆ここにいるしかないんだよ」という脚本の意図がミエミエすぎて、気持ちが入らない!
全てはFBIのお姉ちゃん(観客目線)に「なるほどーーだからネイティブアメリカンの人たちは大変なのね」とわからせるためなんですが…あからさますぎると「なるほど」の前に「ご都合主義感」が漂ってしまってーー。
アメリカの貧困問題を描いた「フローズンリバー」とか、別に部外者を連れ回して誰かが「ほら、彼らは仕事がなくて、薬をやるしかないんだ」とか説明しなくても、主人公の家をぐるっとカメラが回るだけで、伝わりましたよ。どーしよーもない閉鎖感。
主人公のハンター能力を裏付ける豆知識はめっちゃ脚本に取り入れたシェリダンですが、本作の貧困ツアー(捜査)で描かれることなんて、アメリカ人ならほぼどこかで聞いたことある話。いや、映画をちょいちょい見込んだ人でも聞いたことある話じゃありません??
もっと具体的に、新しいファクトや問題を出して、ネイティブアメリカン居留地の問題を立体的に描いて欲しかったですねーー。

問題③
オチ!真犯人!ですよ!
ここが一番ズコッ!ってなりました。
こーゆー民族や組織などの内部事情もので「実は外の人の仕業でした」ってあるあるなので、そこはとやかく言うつもりはないですが…
え?彼氏の家に帰ってきたルームメイト達が酔っ払って?起こした事件だったの??
いや、悲惨だけど…
これって民族とかほとんど全然カンケーないし!!普通に白人の彼女だって同じこと起きましたよね?あの状態なら?
確かに、犯人のおっさん言ってましたよ最後「ここには何もないから」とか。
でもそんなん、居留地以外でも同じじゃないすか!しかもあのおっさんは無理に居続けなくていい人じゃないすか!
でもって、彼女の彼氏はめっちゃいい人だし!
彼氏が酔っ払ってルームメイトに「ほら、こいつら居ても居なくても誰も気にしないから」とか言って彼女を差し出したならわかりますよーー。
いや、こんなアホな事件、東京のその辺で起きてそうだからw(失礼発言スミマセン)
貧困も、民族も、カンケーねえー!
せめて彼女があの日彼氏に会いに行った理由がのっぴきならない「居留地的理由」とかにしないと!そーゆー工夫こそ脚本家の腕の見せ所じゃないんすかねーー。
あの犯人にはがっかりですわー。犯人というか、真相ですね。テーマと関係薄っ!

④クライマックス(おまけ)
これは上の3つと比べて超どうでもいいのですが…
最後、遠距離射撃の名手、ランバートが揉め事から一人銃を持って離れてるってどうすか???
あんな頼もしい、ドキドキ感にかけたクライマックス久々に見たわ!
そりゃ彼が撃ってくれるでしょーよ!
あそこは、ランバートに銃がないとか、離れているのがあの居留地保安官だとか?そーゆーのでドキドキさせてー。
リーサルウェポンなら、ジェレミーが敵に捕まって盛り上げてるところですよーー。リアルに欠ける上に盛り上がりにもかけるクライマックス。
それから犯人一味に、ボーンコレクターの真犯人混ぜるのやめてくれ。最初から悪人にしか見えなかったわ。

は!

いかん!

いまいち!とか言いながら、完全否定なレビューになってしもたw
いや、いいとこもありましたよーー。
エリザベスオルセンの着替えシーンとか、ジェレミーの超頼もしいキャラとか、最後唐突に出てきたフェイスペインティングギャグとか。

でもねー、やっぱり致命的なのが…
テーマにつながる真の被害者(ネイティブアメリカンの女性)が脇役にしかいないってところですねー。

ネイティブアメリカンのティーン女子とか一人出しといて、「どーせこうなのよ、私たちの人生は」ってタバコでもくゆらさせながら言わせるだけで、だいぶ伝わったと思うんですよねー、映画のテーマ。
本作に出てきたネイティブ女性は、死んでるか(2人)、着替えを手伝ってるか、泣いてるか、ジェレミーのためにドアを開け閉めするか、だけですからねーー。