タカシサトウ

田園に死すのタカシサトウのレビュー・感想・評価

田園に死す(1974年製作の映画)
3.9
[独特の世界]

 古めかしいけれど、風変わりな、独特の世界。寺山修司の自伝的な作品。

 寺山修司の母は、遠方に仕事に行ったり、彼を取り込んだり、安定しない人で、寺山は母に飲み込まれているような状態だったらしく、母から脱することは出来なかったけれども、脱しようと母殺しのテーマがここで表現されたようだ。

 そして、母からの自立の意味も含んだ少年時代の私(寺山修司:高野浩幸)の家出のテーマ。父を早くに亡くした為、死のテーマが出てきたのかもしれない。それを寺山修司なりの猥雑な混沌とした映像で表現しているように思った。

 劇中劇のような、少年時代の私とそれを映画にした現在の私(菅貫太郎)との対話構造も分かりやすかった。
 
 ラストは、往年の唐十郎の赤テントのラストみたいで、あの時代の新宿の街に飛び込んでいくかのような展開で、爽快感がある。

 主人公の少年時代の私の憧れる人妻の役の八千草薫が少し若い頃で、本当に美しかった(2022.1.29)。