てっぺい

マレフィセント2のてっぺいのレビュー・感想・評価

マレフィセント2(2019年製作の映画)
4.0
【“義母バトル”映画】
姫にとって義母の2人が始める、ディズニーとお伽話の範疇をゆうに越えた壮大バトル。魔法や妖精達の不思議な映像美に酔いつつ、アンジーの思いを込めた骨太映画として見るのも面白い。
◆概要
「眠れる森の美女」の悪役マレフィセントを主人公にしたファンタジー映画『マレフィセント』('14)の続編。出演は「チェンジリング」のアンジェリーナ・ジョリー、「ネオン・デーモン」のエル・ファニングら前作キャストの他、「アントマン&ワスプ」のミシェル・ファイファーも。監督は「パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊」のヨアヒム・ローニング。製作にはアンジーの名も。
◆ストーリー
マレフィセントがオーロラ姫との間に、“真実の愛”を見つけてから数年後、オーロラ姫とフィリップ王子が結婚することに。しかし婚礼の日、罠によってマレフィセントとオーロラ姫の絆は引き裂かれ、究極の愛が試されることになる。
◆感想
ディズニーには珍しく、迫力と残虐性のある映画。酔うほどの映像美と、それが故にリアルで心が痛む描写も。前作よりもぐっと世界観が広がり、またお伽話の範疇を超えて人間社会の縮図的な隠喩が光る、深い映画。
◆迫力
前作の冒頭と同じく、大地を飛ぶ目線で始まる本作。海面や地面スレスレから回りながら上空に飛ぶ映像美は、リアルすぎてちょっと酔ってしまうほど笑。魔法で草木がうごめく不思議な描写、可愛らしい妖精たち、そしてもちろん、今作は飛翔シーンが増えたマレフィセントの迫力がスゴイ。とにかく飛んでるし、その目線映像も多いので、3Dや4DXで見るにはうってつけの映画かもしれない。

◆以下ネタバレ

◆残虐性
劇中、フィリップ王子が「これは戦争じゃない、虐殺だ」と叫ぶシーンが。結婚式に招待され、嬉しそうに着席していく妖精達が死の旋律とともに虐殺されかけるなんて、えげつなさすぎる。無垢な存在が悪に隔離され虐殺される、描きようによってはR指定が軽くつく発想を、ねじ込んだ脚本の本気度には拍手。無残に爆撃され堕ちていく仲間達も含め、王妃と対峙するマレフィセントの怒りの形相を頂点に昇華させていたと思う。
◆縮図
そんな残虐性が生まれるのは、この映画が焦点を当てる人間社会の縮図にあると思う。長い間、人間から虐げられてきたマレフィセントの同種族達に根深く残る憎悪。人間も、自国を守るために戦うことをいとわない。そこに、王妃の情報操作という“ボタンの意図的掛かけ違い”で戦争が勃発する本作。現実社会で歴史的に何度も行われてきた戦争の典型例だし、そんな人間社会の縮図であり隠喩が、本作では何気に骨太な存在感だった。
◆アンジェリーナ・ジョリー
主役であり、本作では製作にも名を連ねるアンジーは、映画の製作会議などの場でも影響力があったはず。自身も3人の養子を迎え入れている彼女は、本作のインタビューで「家族というものに血のつながりは必ずしも必要ではありません。この世界の中でお互いを見つけ合い、家族を作ることができるのです。」と語っている。マレフィセントとオーロラ姫は、血の繋がりのない、絆で繋がった母娘関係。“義母バトル”な本作で伝わってくる、多様性を認め合う事で、家族の定義の拡がりや、世界の争いの制止に繋がる、そんなメッセージ。“マレフィセント・キッズ”(?)達と飛ぶラストシーンと映画全体に、アンジーがそんなメッセージを込めた、なんて見方も面白い。

前作の雰囲気とは打って変わって意外に骨太な本作、とても見応えありでした!

他のレビューも載せてるので、よかったらご覧ください↓
https://www.instagram.com/p/B3yWHJCFjhy/?igshid=1sq93697p3t1l
◆トリビア
○マレフィセントは、ディズニー・アニメーション映画「眠れる森の美女」(1959年)で初めて姿を見せたキャラクター。(https://mantan-web.jp/article/20191017dog00m200080000c.html)
○ 3本目が、オーロラが母になる話、また日本が舞台になる可能性をアンジェリーナ・ジョリーが言及した。(https://mantan-web.jp/article/20191017dog00m200080000c.html)
○フィリップ王子役のハリス・ディキンソンは、来年2月に公開される『キングスマン』の前日譚『キングスマン:ファースト・エージェント』ではメインキャストに抜てきされている。(https://www.cinematoday.jp/news/N0111758)
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