ケン・ローチの作品はいつも、社会派なのに声高に主張せず観客に考えさせる。一所懸命生きてる名もなき人に目を向けさせ、社会の片隅にこういう人がいるよ、と教えてくれる。
でも今回はいつになく、はっきり、大きな声で主張している。
観客に「なぜ、彼らは苦しまなければいけないんだ!?」という憤りを共有させる。
富も権力もない「普通のおじいさん」を主人公にして、現代社会から取り残されながら、それでも生きていかなきゃならない人々を描く。
役者の窓口対応、縦割り、デジタル化…すべて、そっくりそのまま日本社会に置き換えられる。
まったく人ごとじゃない。
俳優たちが、スクリーンに映らないキャラクターの今までの人生まで感じさせるいい演技。
もがきながら、それでも一所懸命生きている人は、それだけで尊い。