ぬーたん

わたしは、ダニエル・ブレイクのぬーたんのレビュー・感想・評価

2.5
ダニエル・ブレイクって名前、ダニエル・クレイグに似てる!
007のあの顔が浮かんでしまった。
こっちのダニエルはハゲでした。
ストーリーは好みでなさそうだけど、かなりの高評価なので観てみた。
ん?あれ?
この作品を辛口でレビュー書いてる人居ないかな?と探して見たけどひとりも居なかった。
私がズレてるのかな。
でも好きじゃない。
弱者を描いた作品を酷評すると、あんた血も涙もないわね、冷たい人!なーんて思われそうだけど、作品として正直な感想を。

主人公ダニエルは59歳の元大工。
心臓の病気で仕事を辞めて、国の援助を受けようとするが、複雑な制度と機械的な職員の応対で、なかなか受けられずに悪戦苦闘。
シングルマザーのケイティと出会い、自らも大変なのにこの母子の為に奮闘し、家族の様に仲良くなっていく。
この作品で一番引っかかったことは、弱者と強者・善人と悪人・加害者と被害者みたいな両極端な対立する関係を描いているようで、実は本当のところはそうではないということだ。
役所側の人間も、マニュアル通りに対応してる、ごく普通の人間で冷たいわけではない。確かに機械的で腹立つけど。
彼らもまた生活や家族を守るために、仕事をしているに過ぎない。
情に流されれば、例外を認めてしまうということで上司から責められ、自身の職にも影響するのだから。
もっと上の役人や政治家が決めていることで、本当の悪はそちらだと皆が分かっている。
でも、この作品を観ていると、役所側の人間の対応にイライラさせられ、酷い人!と感じてしまう。
弱者切り捨ては誰がやっていることなのか?
その真実がごまかされて描かれているような気がした。
国の援助に頼れない時のことを想定して、自分で別の道を用意できなかったのかという、ちょっと冷たいかもしれないが、ダニエル達の方にもイライラしたりする。
もしもの時の自分の食いぶちの確保が出来なかったのは59歳でどうなのか。
とつい思ってしまうのが本心。
ダニエルが長年真面目に働き税金を納めて来て、国に援助をして貰う権利があることは十分に分かる。
でもだからと言って、役所内で怒鳴ったり、職員に悪態をついたり、落書きをしたりすることはどうなのか?
その落書きも税金で消すのだ。警察も税金だ。
国民みんなの血税で支払われる。
そして、役所に電話が繋がらないイライラを、犬を連れた老人に汚い言葉で罵倒することで発散させる。
この人に感情移入出来ない。
そしてケイティ。
明日から学校なのにお金がない。
援助を受けられると思ったのに、と叫ぶ。
子供が可哀想。
生活の地盤を固めてから引っ越しできなかったのか。
頼れる人は居なかったのか。
その日暮らし過ぎる。
そして、その後の行動も…。
この人にはもっと感情移入出来ない。

社会問題を提議し、色々考えさせられる作品であるのは分かるし、最後まで気になって観るという点で退屈と言うわけではなかったのが良かったところ。
カメラが暗転し、ぶち切れる手法が度々あったが、それが今作では効果的には感じなかった。
オープニングの暗い中会話だけ、というのも好みでない。
ドキュメンタリーを観ているような感じで気になった。
淡々として、最後まで盛り上がりがなかった。

*****以下ネタバレ********


イライラしっぱなしで、ようやくラストに好転するかと思い期待して観ていたら、
ダニエル死す!
申し立てのその日、しかもトイレで。
心臓発作で即死。遺言も別れもなかった。
ありゃま、です。
風呂敷広げて、さあ、畳もうとなったら、畳む本人が突如居なくなっちゃうって。どうすんの、その風呂敷。
辞めて欲しい、その反則技。
最後、どうなるかちゃんと伝えてよ。
デモ行進するとか、闘い続けるとか、ケイティと暮らすとか、そういうホットするの、カモン。
そして、最後のケイティの追悼スピーチ。
『国の制度が彼の死を早めた。』
それは言いがかりってもんだ。
結構楽しく暮らしてたじゃない。
本棚作ったり友達も居たし。
心臓は元々悪かったのだから。
そして、ダニエルが申し立ての時に言おうとして書いたもの。
確かにダニエルはそうだったんでしょう。
『物乞いでも泥棒でもない。』
読んでるケイティは泥棒してたよ。
『施しは要らない』
読んでるケイティはボランティア団体の施しを受け、更にその場で缶詰を開けて食べてたよ。
違和感あったなあ。素直な気持ちで聞けない。
ケイティの仕事は?援助は?子供たちは?
と気になることも風呂敷に広がったまま。
ありゃま。
ぬーたん

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