emily

ローサは密告されたのemilyのレビュー・感想・評価

ローサは密告された(2016年製作の映画)
3.7
 マニラのスリム街で小さな雑貨屋を営み、4人の子供と夫と暮らすローサ。生活の足しに夫は麻薬を売っており、それが警察にばれ夫婦で逮捕されてしまう。腐敗した警察は釈放のため、多額の賄賂を提案し、かき集めるため子供達は自分達のできる事を必死でやる・・

 ドキュメンタリーさながらの揺れるハンディと粗い色彩がスラム街の現状と非常にマッチしており、臨場感溢れる映像にひきこまれる。会話の間から溢れる表情、人と人との隙間、スラム街で暮らす人々の社会問題をしっかり浮き彫りにし、”その日を生きる”事が生活のすべてである事が手に取るように分かる。

 腐敗した警察、麻薬の横流しや密告、横領、子供達もそれに加担させられ、家族との絆が非常に強く、それ以外は全く信用できない社会。常に雨が降り、湿気を感じさせる。夜のネオンがオレンジ色に浮かび上がり、今日の友は明日の敵となる緊迫感のある街で皆必死で生きている。

 子供達がやり方はそれぞれではあるが、必死で家族を守るためお金を集める姿は好感が持てる。家族の団結は皮肉にも親を釈放するためにさらに結束を高め、家族の大切さを改めて実感する。スラム街、ここが家族の暮らす場所。ここが居場所。貧困ではあるが、それでも家族がいて、愛する人がいるという事は幸せな事だ。逮捕され保釈金を必死で集めきった時のローサの強い表情が印象的だ。同じ場所で暮らしていく。しかし昨日までとは違う。そんな強い意志がしっかり観客の心にも大切な物を落としていく。
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