むらむら

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。のむらむらのレビュー・感想・評価

5.0
質問:

「モンスターズ・インク」の毛むくじゃらと目玉の二人と、「IT」のピエロくん。

同じ「子供の恐怖を集める」キャラなのに、どうしてここまで好感度に差がついてしまったのか。

答え:

慢心、環境の違い。

そんなふうに答えたくなるほどに、ボッチなピエロくんの境遇に同情してしまいたくなる悲しい作品。原作は、「落下の解剖学」でも言及のあった、ホラー作家スティーブン・キングの名作。

簡単に言うと、下水道をベースに生活してるピエロくんが、27年おきに地上に出て子供たちを襲って、当然のように、返り討ちに遭う話。

舞台は1980年代。メイン州の田舎町デリー。トラウマや悩みを抱えた子どもたち、名付けて「ルーザーズ」は、27年おきに活動する殺人ピエロの存在に気付き、大人には見えない、その殺人ピエロと対決しようとする。

■ ピエロくんに言いたいこと

ピエロくんに言いたいことはいくつかあるが、まず……。

ピエロくん、休みすぎ。

27年間も何してんの?

不老不死だから許されてるけど、下水道に27年も引きこもってたら、人間だったら俺みたいな高齢ニートだよ? 比べるわけじゃないけど、ジェイソンとかレザーフェイスとか、ニューヨーク行ったり宇宙行ったり、ゲーム化されてみたり、何十年も頑張ってるのに……ピエロくん、季節労働者にもホドがある。

そりゃ、気持ちはわかるよ。

最初は頑張って活躍してたのに、キモいし、なんかハゲてるし、だんだん引きこもりたくなっちゃったんだよね。

周囲の取り巻き連中も、浮浪者とか首無し男とか、会話の通じなさそうな連中だしさ。っつーか、首なし男とか、会話する首すらないし。

そりゃ、下水道の最下層に、引きこもって、長年過ごしたくも、なるというもの。

ただ、俺的に「ピエロくんは偉いなぁ」と思うのは、(誰が決めたか知らんが)「27年」って決めたら「27年」おきに、律儀に姿を表してくれるところ。

俺がピエロくんだったら、27年が経過して起こされても、

「あー、面倒くせぇ……今回はパス!」

って、二度寝しちゃうもの。

そうして、1年後くらいに起きて、あと26年間、ネット見たり、TikTokに変なダンス投稿したり、フィルマにコメントしたりして過ごすもの。

そんな自堕落な生活をおくらず、きっちり、27年おきに「今年は俺のターン!」みたいに、ウキウキで出てくるピエロくん、心から好感が持てる。ちょっと「セミ」みたいだよね。

なので、まるで、セミが短い一週間にミーンミーンと鳴きまくるように、全身全霊で、子供たちを脅かすピエロくんの本気っぷりには心を打たれる。

子供たちでデコりまくった下水道なんて、最高だったよ!

■ 子供たちに言いたいこと

それに比べて「ルーザーズ」とかいうリア充連中。なんなのお前ら。

特に、スクールカーストの下層でいじめられてる感を出しながら、紅一点の女の子といい感じになってるの、ホント、イラっとくる。みんなで秘密基地つくったり、自転車で駆け回ったり、青春すぎない?

ぼっち・ざ・下水道で、スクールカーストどころか、下水道の最下層にいるピエロくんから見ると、ホント

「リア充、爆発しろーーー!!!」

って気持ちだったと思う。ま、爆発したのはピエロくんだったけどね……。

特に、紅一点の、やたらマセた13歳の美女。ヤリマンとの噂が本当か、と聞かれてのセリフ。

「私、したことあるの、キスくらいだよ。それも、1回だけ」

ファァァァァァック!!!! はぁ? 素人童貞の俺なめんなよ? 俺が13歳のときは、アイドルのポスターとしかキスしたことなかったよ? 勝ち組乙!!!

みたいに、ピエロくんもフィルマに書きたくなったと思う。

そんな「ルーザーズ」が、不法侵入を厭わずにズカズカと下水道に入ってくるんだから、そりゃ、ピエロくんもワンオペで頑張って戦うよね。

でも、ピエロくんと「ルーザーズ」では、多勢に無勢。最下層とリア充軍団。いかにピエロくんがハゲの挙動不審なオッサンだからと言って、大人数でボコるのはどうかと思うよ。

あと画面上では出てこなかったけど、子供たちって残酷だから、「ペニーワイズ」って本名のピエロくんのことを

「やーい、やーい、このペニーワイズ!!」
「略してペ二ス野郎!」
「エーデルワイス!」
「デコ助! ハゲ!」

ってイジメてたと思うんだよなー。

ホント、可哀想なピエロくん。

■ 個人的に好きな場面

ホント、こんなになるんだったら、ピクサーの毛むくじゃらと目玉に土下座して、仲間に入れてもらえばよかったのに。そしたら、「サリーとマイクとピエロ」って、子供たちにも人気になる未来が、ワンちゃん、あったかもしれないのにね。ちょっと、コジらせすぎちゃったね。

俺、個人的には、ピエロくんが頑張って作った

「こわい」「こわくない」「すごくこわい」

のドアが、ピエロくんの「人を楽しませたい!」ってポジティブな気持ちが伝わってきてよかった。ドア3つ用意しても、開けるのは一つだけなワケでしょ? ホント、ピエロくんのサービス精神には頭が下がる。

欲を言えば、ピエロくんには

「エロい」「エロくない」「すごくエロい」

というドアを作って欲しいかな。そしたら、ピエロくんみたいに「ウキウキ歩き」をしながら、「すごくエロい」に、毎日、突撃するのになぁ。

(おしまい)
むらむら

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