茶一郎

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。の茶一郎のレビュー・感想・評価

4.2
 R指定ホラーとして同年公開『ゲット・アウト』や過去作では『エクソシスト』を超える見込み、さらにR指定No.1ヒットの『デットプール』を超える勢いさえある、まさに「怪物」級の大ヒット作が今作『IT』であります。同年公開の大ヒット作『ワンダーウーマン』、『スパイダーマン ホームカミング』も「鬼(イット)が来たぞ、逃げろ!」と、まさか21世紀にもなって、北米興行ランキングが現行映画界の台風の目であるヒーロー映画と30年前に出た原作の映画化とのBoxOffice鬼ごっこをやっているなんて誰が予想できたのでしょうか。
 
 そんな大ヒット作『IT/“それ”が見えたら終わり』(このような誰も得しない邦題は無視して、以下『IT』)。「何で今頃、『IT』!?」という疑問に、「だって『ストレンジャー・シングス』があったじゃないか」という自問自答が頭に流れます。
 2016年にリリースされ(こちらも)メガヒットとなったNetflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス』は、全編を80年代オマージュに捧げ、物語が一人の少年の失踪から始まる『IT』同様の展開、また『スタンド・バイ・ミー』、『キャリー』のようなスティーヴン・キングの世界、加えて『E.T』、『未知との遭遇』、『ジョーズ』といったスティーヴン・スピルバーグの映画世界をミックスした最高のドラマシリーズでした。そもそもこの『ストレンジャー・シングス』のクリエイター・ダッファー兄弟は、『IT』のリメイク作の監督を熱望していた所、ワーナーに断られ、『ストレンジャー・シングス』もといNetflixに流れ着いたという経緯があります。
 つまるところ、今作『IT』とNetflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス』とは、主演子役フィン・ヴァルフハルト氏が二作の架け橋となり、切っても切れない関係にある。『IT』があったから『ストレンジャー・シングス』が生まれ、『ストレンジャー・シングス』の大ヒットがあったから『IT』予告編がバズり、映画は大ヒットしたという訳でありました。

  さて『IT』。今作は、そもそも現代に生きる大人の登場人物と、彼らの回想上の少年時代を行き来する作品だった『IT』の少年時代のエピソードのみを切り取った作品になっています。従って、原作的には今作のみではお話は終了していない、実は今作は『IT part1』だよ、というサプライズでした。そのお話の構造故、非常に同じくスティーヴン・キング原作の『スタンド・バイ・ミー』に近い作品の雰囲気を感じさせます。

 監督は、「メキシコのオタク番長」=ギレルモ・デル・トロ監督の製作総指揮『MAMA』で長編監督デビューをしたアンディ・ムスキエティ監督。ビックリ系ホラー『MAMA』から、同じくピエロによるビックリ系ホラー『IT』
のメガホンを受け継いだという流れ、また『MAMA』で登場した顔の歪んだママ怪物に、今作『IT』におけるペギー・ワイズが化けるという同様のビックリ造形・演出も見られました。

 ゾーニングがR15であるため原作のエグさを存分に映像化しながら、非常に繊細な子役の演技を引き出しホラー以上に青春映画として抜群の輝きを見せるシーンに感動を覚えます。
 人の想像に基づく恐怖を操る怪物に対し、最も想像力の豊かな外れ者の子供たちがその想像から生み出した知恵と勇気をもって一致団結し、世界に闘いを挑む。「イット」が生み出す暗黒の雰囲気から、まるで毎夏の『ドラえもん』映画のような爽快感を生み出し、そして彼らの世界は『IT part2』に続きます。
茶一郎

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