やまぞう

ハクソー・リッジのやまぞうのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
3.0
第二次世界大戦時、熾烈を極めた沖縄戦で武器を持たずに戦場に踏み入り、衛生兵として多くの兵士を救った男の実話。

志願兵として戦場へ行くための訓練段階で、武器を持つ事を断固拒否するデズモンド。
人を殺すために戦場へ行くのではなく、仲間を救うために志願したのだという彼の意志は、当然ながら理解されない。

何故なら、人を殺し、殺されるのが戦争であり、兵士達はその大前提の中で戦うモチベーションを一つにし戦場へ向かうからである。

彼の信念を貫く頑固さは、共に戦地に向かう仲間を困惑させ、異端者扱いされてしまう。
そりゃそうだよねー。
あの戦時下で
「んじゃ〜オマエ、戦場に何しに行くねん?!」
と、殆どの人が思うよなぁ。

がしかし、デズモンドの信念の真価は、メル・ギブソン監督の真骨頂でもある容赦のない、内臓と手足が飛び散るハクソーリッジの戦闘シーンで発揮される。

いや〜、爆弾と銃弾が飛び交う白兵戦のカオスな描写は素晴らしい。
ずっと全身硬直して観ちゃったよ。

この映画は一つの英雄譚ではあるが、デズモンド自身が抱える信念と矛盾には言及していない。
まぁ、そこまで描くと4時間くらいの映画になっちゃうのかもしれないが。

「人を殺さずに、人を救いたい」という信念は理解できるが、では、自分が銃を持っていたら目前で無惨に殺されていく仲間を救えたのではないか、という葛藤は無かったのだろうか。

今作の主人公アンドリュー・ガーフィールドは、映画「沈黙」で信仰の矛盾に悶絶する宣教師を演じていたが、「ハクソーリッジ」のガーフィールドにも信念との矛盾の答えは示されていない。

個人的には、もうちっとソコのところ踏み込んで欲しかったかなぁ。
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