Maki

ハクソー・リッジのMakiのネタバレレビュー・内容・結末

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます


映画のクライマックス。
ハクソー・リッジ=沖縄の前田高地における両軍混交の白兵戦。その凄惨さに息が詰まるほど。個人としての資質や力量。軍隊としての訓練成果が生存率にどれほど寄与するのか見当もつかない。その大半は運の良し悪しの結果に想えてしまう。
 
阿鼻叫喚の生き地獄のなか武器を持たずに駆けまわり自らも負傷しながら75人を救ったデズモンド・T・ドス。
 
御本人について調べると
実は沖縄戦の前にもグアムやフィリピン諸島で勲章を授かる活躍をしていて唖然。彼の揺るぎない信念信仰心に敬服しつつもその尋常ならざる働きは「人智を超える何か」に支えられているように感じた。
 
しかし戦場では狂人かつ超人であった彼も 負傷や感染がもとで重い障害を抱えながら87歳で亡くなっている。国中から賞賛されても英雄視を好まず「帰らなかった兵士こそ英雄」と語り 数十年間も映画化の話を断り続けていたとも。

敵か味方かその違いはなんだろう。
救うとはなんだろう。
デズモンドは地下壕で遭遇した敵=日本兵を治療するが デズモンドが救った米兵が回復後に日本兵や民間人を殺した可能性も考えられる。
同じく太平洋戦線を描いたドラマ【ザ・パシフィック】では米兵が屈しない日本兵に敬意を表す場面や 逆に米兵が民間の少年を無意味に殺す場面もあった。
 
正義や家族や仲間を守るために殺し合う人間。
戦場でもうひとりもうひとりと願い救う人間。
殺し合いに巻き込まれ否応なく殺される人間。
殺し合った同士が時を経て友好を持てる人間。
劇場で飲食しながら地獄を疑似体験する人間。


軽くオススメと云えないけれど
観る価値のおおきい映画だった。


【蛇足の小ネタ】
① 屈強な同僚スミッティ(演:ルーク・ブレイシー)が、デズモンドから妻ドロシー(演:テリーサ・パーマー)の写真を奪い「美人だ。俺にふさわしい」と言うの。ルークとテリーサは別の映画で恋人役だったのでちょっと面白かった。
テリーサは【ウォーム・ボディーズ】でゾンビ(演:ニコラス・ホルト)が恋する少女役のときから相変わらず綺麗♪
https://filmarks.com/movies/54344
 
② 戦闘描写は凄すぎる…ゴアグロ満載…けど稀に大袈裟なアクション(ジャンプやスロー)とかで。興醒めより「そう…作り物なのよね」とよい息継ぎポイントに。
 
③ 映画パンフから引用。「弟をレンガで殴った ⇔ 車の下敷きになった少年をレンガで救った」「父のベルト鞭で罰を受ける ⇔ ベルトで止血する」の対比。物も心も使い方によって傷つけもするし救いもする。ほかにも伏線があるのかしら。
Maki

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