かすとり体力

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガールのかすとり体力のレビュー・感想・評価

3.7
『モテキ』『バクマン。』等の大根仁監督作品。

このインパクト全フリのタイトルにより前々から気になっていたが、最近色々なところで「自我確立模索系青春映画」(?:←私が勝手にそう名付けただけ)の一つとしてその名を目にしたことから、やっと鑑賞。

まず、大根仁監督の持ち味としてとにかく軽薄。(褒めている)
ちょっとしたユーモアと絡めながら、ときに人間のイヤな部分にも触れつつ、しかしそこには「笑える程度」でそれ以上深くは立入りしない絶妙なバランス感覚。

ということで、何も考えずに観てもしっかりと面白い。

あと、キャスティングは結構な奇跡系。
端役まで含めてものすご説得力のある役者の起用だと思うし、やはり水原希子氏、これはもうジャストマッチでしょう。
そもそも彼女が表現するキャラクター自体が魅力的で、(括弧付きだけど)「女性としての魅力」をセルフマネジメント&セルフブランディングすることに天賦の才をもった人ってそれはそれでなかなか凄いことだし、しかもこういう人、誰の人生の中にも1人・2人くらいは登場してきているのでは…。

妻夫木君もこういう役をやらせたら右に出る者はおらず、ちょっと「女性に振り回される男あるある」がリアル過ぎて、私自身も一部共感性羞恥を感じさせられるところまでありました。

また、テーマ的にも、その軽薄さと裏腹に、最後の最後にはなかなかに深いところに手を突っ込んでいると思う。

自我確立模索系映画としては「なりたい自分になれなかった、でもそれでも自分は生きていく」というのはよくある着地ではあるが、
本作、うがった見方をすれば「ってか奥田民生はなりたい自分になれてるのかな?彼ですら、なりたい自分になれている「ふりをしている」だけでは」というところにまで目配せされた終わり方にも見え、そうなるとなかなかに奥深いところに思考を促してくれる作品とも言える。

ま、そんなこと考えずに見ても、楽しいドタバタコメディー(+少しサスペンス風味)と見ることが出来て十分に面白い。

同監督の良いところが出た良い作品だと思いました。
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