華々しいスターの誕生と、痛々しいスターからの転落。
世界的に有名なロックスターが、たまたま立ち寄ったバーで聴いた女性の歌に惹かれ、いきなり自分のステージに彼女を上げてしまうって、夢みたいな話やな。夢やがな、チッチキチー。
スターへの階段を2段飛ばしで駆け上がるなんてもんじゃない。エレベーターで一緒になったロックスターが、「スターの階」というボタンを押してくれた感じ。そんなのアリー?
いつものレディー・ガガとは違い、アリーという女の子になった素顔の歌が心に響く。歌唱力は言わずもがなだが、ステージで歌う「Shallow」の高音に鳥肌が立った。チキンスキンスタンダップ!
そして、監督と主演を務めたブラッドリー・クーパーが歌まで歌っちゃって、本職でもないのにこれまた凄い歌声。閉店後のバーで歌った「Maybe It's Time」は名曲。アルペジオの音色がたまんなかった。クーパー扮するジャクソンの髪型と髭を自分が真似たら汚らしいだけだが、クーパーならカッコイイんだよな、ズルいな。
冷凍豆の手当てから弦の指輪まで幸福に満ちていて、ロマンスの神様が同居しているようなラブストーリー。そんな幸福の不安要素はアルコール。アリーが有名になるほど酩酊になるジャクソン。転落するその姿に彼の葛藤を感じた。
スーパーマーケットの駐車場や、招待したステージで歌ったアリーがとても好きだったんだろうな。売れるためにプロデュースされたアリーの衣装や髪型、振り付けなどが「らしくない」と思っても、それを口にすると浴室での喧嘩を繰り返す。アリーの栄光を否定する事はできないが肯定もできない。そんな気持ちの葛藤が酒の量を増やしたように思う。
「魂の底まで掘り下げなきゃ長続きしない。歌は正直なものだ、嘘は見抜かれる」