Oto

アリー/ スター誕生のOtoのレビュー・感想・評価

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)
3.7
(United Airlines)
圧倒的な歌とパフォーマンスと曲で、脚本の浅さや強引さがどうでも良くなってしまうタイプの映画かな〜と思ってみていたものの、終わってみたら深みがあった。Gagaにも驚いたけど、Bradley Cooperは作曲演奏も自分でやって酒は一滴も飲んでないとか聞いて驚いた。

売れた時にアリーのダンスをジャクソンは否定していたけど、やりたい事と求められる事の両立を諦めてしまうのは非常に悲しい。デザインとアートの議論もよくあるけど、ギャップを埋める必要などなくて常に自分と社会の接点を探していくのが創作だとよく思う。

「失敗は努力が足りないから」みたいに言われがちだけど、物語中の彼のようにどうにもならない人はたくさんいるわけで、そういう弱者をいかに救えるかが音楽や映画やデザインなんだろう。媚びるわけでもなく、やりたいことを曲げるわけでもなく。12音とオクターブの繰り返しや、画面の中で動いているだけの映像が、どうして人を楽しませ続けられるのか、みたいなものも一つのテーマだと思った。

ピグマリオン型の文脈(マイフェア、プリティウーマン、アーティスト)とか、クレイジーハートやオズのオマージュなどは解説聞くまでわからなくてまだまだやな〜と思ったけど、FisrtManと同じ寄りの一人称視点はさすがに気づいた。
客席から広く撮らずにモニターやメディアだけで映すのは違和感あったけど、記号化されがちなスターや有名人も同じ人であって、主演の二人自身がそうなんだろう。作り込まれたスターGagaというキャスティングにも意味があるし、コンプレックスの鼻をなぞる仕草も現代性があって良い。

宇多丸さんが「歌を通じてのみ理解し合う二人で、本当は兄と会話したかった。嫉妬を超えた対話の消失が彼を苦しめた」みたいなことを言っていてなるほど〜と思った。個人的な恋の話というのも納得したけど、"車の中で見えるもの"が暗示することは気づかなかったのでもう一度みたい。
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