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潜水艦クルスクの生存者たちのsymaxのレビュー・感想・評価

3.6
"我思う…海の男に固い絆あり…心は一つ、手を携え…"

原子力潜水艦"クルスク"は、ロシア海軍の力を全世界に知らしめるべく行われる大規模海軍演習に参加する為、北方基地を出航する…乗組員118名…

クルスク艦内で突然魚雷が爆発…その爆発は地震計で計測される程の破壊力で艦内を巡り、一気に沈没…辛うじて生き残った23人は、船尾で救助を待つ事に…事態を把握したイギリス海軍の援助の申し出に対して、ロシア軍上層部の動きは遅く、苛立つ乗組員の家族たち…

2000年に実際に起きた未曾有の大惨事となった原子力潜水艦沈没事故を映画化した本作は、生き残ったクルスクの乗組員とその家族がロシア軍上層部の思惑に翻弄された悲劇を描いたと言えます。

"偉大なるロシア"に凝り固まり、もはや老害とも言えるペトレンコ司令長官を演じるマックス・フォン・シドーの太々しい演技が印象深い…この方の遺作になるのでは?

一方、コリン・ファース演じるイギリス海軍ラッセル准将は、出番が少ないながらも要所を締める流石の貫禄でした。

ですが、やはり、爆発で辛うじて生き残った乗組員達の姿が一番印象深く、何より画面から溢れ出る絶望的な閉塞感が居た堪れない…

この事故の事は当時大々的にニュース等で流れていて、ことの顛末を知ってしまっているので、主人公ら乗組員に待ち受ける運命は重く、やるせなくなります。

今この時期に公開される事でロシアの闇の深さを甚く実感させられるのです。

意外にも本作のプロデューサーは、リュック・ベッソン、そして監督はアカデミー賞を取ったトマス・ヴィンターベア、しかも演者は国際色豊か…
でも、何処か違和感を抱くのは、ロシアが舞台なのに全編が英語…ロシアっぽくなく、深みが今一と捉えてしまうこともしばしば…この事故では当時、大統領になったばかりのプーチンが、ソチでバカンスやってたことで大顰蹙をくらったような…ですが、作品にはプーチンの"プ"の字もなく…突き詰めるとロシア政府非難な内容になってしまう事を恐れたヨーロッパコープの忖度が見え隠れしてしまうのでした。
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