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蘇える金狼 4K デジタル修復版のsymaxのレビュー・感想・評価

3.9
"悪かった、謝る僕が悪かった…金子がねぇ〜"

その朝…共和銀行の現金運搬係が襲われ、1億円が何者かに奪われる…東和油脂経理部で平凡な平社員として働く朝倉の足元には風呂敷に包まれた大きな荷物が…しかし、朝倉は焦る…銀行側が奪われた現金のナンバーを記録していたのだ…そう銀行を襲ったのは朝倉であった…昼はうだつの上がらぬサラリーマンを装い、実は東和油脂を乗っ取ろうとしていた…

奪った金が使えない事を知った朝倉は、現金をヘロインに替えようと動き出す…

生誕75年を記念した"松田優作の狂気"特集として4K修復版での限定公開…もうとっくに優作が亡くなった年齢を越えてしまいましたが、いつまでも憧れの人であります…

本作は、最も松田優作の魅力に溢れた作品ではないかと私は思っていまして、私が最も好きな松田優作の作品であります。

松田優作のカッコ良さ、ユーモア、そして狂気が奇跡のようなバランスで散りばめられており、まぁ、ストーリーは若干破綻している部分が無い訳ではありませんが、抜群の面白さがある作品なのです。

上映後のトークショーで松田美由紀さんも話していましたが、まるでタバラガニのような長っがい足のシルエットは、画面映えが凄まじいのです…私が好きなのは、松田優作が腕時計を見る所作…左手を45度以上曲げて時計を見るのですが、コレが何度真似しても短い私の指ではどーにもカッコ悪い…そんな一つ一つの所作がモーレツにカッコ良いのです。

あのズッコケ方は優作しか出来ない…ズッコケ方すらカッコいい…

ですが、本作の魅力は、松田優作一人だけでは無いのです。

脇役の魅力が光ってこそ、主役が光輝くのです。

特に、成田三樹夫のなんとも情けない子悪党ぶりは最高なのです。

他にも、"ギャラ高いよ〜"と独特のイントネーションで怪演した岸田森、情けない小池朝雄と佐藤慶…今は亡き名優達の演技は、松田優作の演技と相まって、奇跡の化学反応を起こしているのです。

そして忘れてはいけないのは、風吹ジュン…激しいベッドシーンは、公開当時、相当な反響を呼んだそうで、清純派からの脱皮となった作品となったそうです。

トークショーで話していましたが、松田優作を劇場で観たいと新潟からやって来た20代の女の子達がいたそうです。

亡くなって早35年…何時までも色褪せぬ松田優作の魅力は、今の若い世代にも刺さるのてすね…

今週は、過去作の4K祭りといった様相の鑑賞記録となりましたが、凄い作品にはいつの時代となっても人を惹きつける魅力があるものだと改めて感じた次第です…
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