こたつむり

RAW〜少女のめざめ〜のこたつむりのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.0
★ 食べたくなるくらいに、愛してる

聞きしに勝る衝撃作でした。
ベジタリアンの少女が肉(ウサギの腎臓)を口にしたことから“目覚めてしまう”という物語。倫理観を問う表現は「猟奇的」の一言では収まりません。

正直なところ。
最近は不本意ながらにグロテスクな表現に慣れてきた僕も…うん。かなりツラかったです。直接的な映像(血や内臓)は少ないのですが、本能に訴えかけてきます。

何よりも衝撃的なのは。
自分の奥底にある感情が“ざわざわ”と蠢くこと。自分にも主人公のような“性癖”があるのか…なんて考えてしまうと、怖くて怖くて仕方がないのです。

でも、考えてみれば食欲と性欲は表裏一体。
片方は白昼で発露しても非難されず、片方は世間の目を気にしながら行う…そんな社会的な取り扱いの違いはありますが、根源的なものは同じ。完全に否定など出来ません。

だから、よけいに恐ろしく、悍ましく。
奥底で騒めく自分に戦慄し、そして途方に暮れるのでしょう。

しかも、本作が意地悪なのは。
敢えて煽る表現を選んでいること。
性器周りのムダ毛の処理をするとか。女性が座り込まずに放尿するとか。通常ならば画にしないものを形にし「観てはならないものを観た」気分にさせてくるのです。

また、フランスの文化を知らないことも“不穏な気持ち”に拍車をかけています。主人公が通う獣医大の“恒例行事”が一般的なのか、それとも特殊なのか。判別がつきませんからね。

ちなみに、道端でチュッチュしたり、ライブハウスでバストをさらけ出したり…そんな場面を見て「フランスは開放的すぎてヤバい」と思うのは「日本人は万引きばかりしている」なんて意見と同じ“偏見”で良いですよね?あれは映画の中だけの話ですよね?

まあ、そんなわけで。
静かな画でもガンガンと攻めてくる作品。
目覚めるのは少女なのか観客なのか。
外国では失神した人もいた…という噂も頷けるくらいに人を選ぶ作品ですが「新しい扉を開きたい」なんて知的好奇心に誘われて観てみるのもアリだと思いますよ。
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