いかがわしいタイトルに騙されるな!
韓国映画は凄い。昨年に日本で本格的なゾンビ映画「アイアムアヒーロー」があったが、ついに韓国でも本格的なゾンビ映画が誕生。
感染と新幹線を掛けた「新感染」などという滅茶苦茶なタイトルだが、原題は「釜山行き」
釜山行きのKTXに乗る主人公たちが、車内や国内各地で起こるパンデミックに混乱しながらも釜山へと向かうゾンビ映画。
RottenTomatoesで95%、メタスコアは72点。こんな点数に驚嘆せざるを得なかったが、その点数に相応しい出来だった。
ゾンビ映画と言えば、かなりやり尽くされたイメージが多く、本作でも他のゾンビ映画で散々見てきたような展開が多かった。
でも、何故だろうか?徐々に惹きこまれていく映画だった。
それは、今まで使われてきた小ネタをコレでもかと詰め込ませて、それぞれのクオリティが高水準で、かつ見事にバランスが整っているということではないのかな?と感じた。
まず、パンデミックものに不可欠な始まりのシーン。とても混乱がよく描けている。そして、内部分裂…そこも一捻り効かせている。
ある程度映画が進んでから、予想だにしないような方向へ転んでゆき、情緒溢れる展開が多くなっていく。ゾンビ映画にありがちな人間臭さがよく出ていた。
その他に、自己中心的に動く主人公の成長、親子の愛の物語…と様々な要素が多く含まれていて、気を休めるシーンなんて何処にもないくらいに全く飽きさせない。非常に素晴らしい。
ゾンビが襲ってくるシーンは、「マッドマックス 怒りのデスロード」のようにコマ落としを使って、複雑で素早いゾンビの動きに疾走感を与えていた。
そして、KTXという韓国の新幹線の中で、止めようにも止まってはならない、絶望的な緊迫感と、縦に広がる密室空間のうまい使い方。
映画評論家の町山氏曰く、ゾンビ映画とはその作られた年の情勢を色濃く反映しているとのこと。
そのことを踏まえると、この映画は韓国の頻発するデモに重ね合わせてゾンビを描いていると思う。
勝手な憶測だが、監督は頻発するデモに対して、凶暴的になる国民の恐ろしさを描いたのだろうと思われる。
主演のコン・ユと妊婦のチョン・ユミは「トガニ」の主演の2人。コン・ユはいつもながら好演。
書きたいことが、どんどん増えてくるがこの位にしておこう。
ビビって、ヒヤヒヤさせられて、ムカついて、考えさせられて、泣けて、感情を右往左往させる見事なゾンビ映画だ!!!