じぇれ

新感染 ファイナル・エクスプレスのじぇれのレビュー・感想・評価

3.9
新幹線の中で次々と広がるゾンビ感染。生き残るのは誰だ!?

『新幹線大爆破』と『スピード』を比較した場合、前者は複数の人間ドラマがじっくりと描かれるのが特徴と言えます。
同様に、ハリウッド産のゾンビパニック映画と比べると、ウェットな人間ドラマが展開されるのが本作の特徴です。
これにより、ハラハラドキドキときどきウルウルという、感情に訴えかけるホラーエンターテイメントに仕上がっていて素晴らしい!

また、ゾンビの動きにも拘りが感じられ、おぞましくもユーモラスで、アトラクション感覚を存分に味わえます。

難点はペース配分。
最初の10分ゆったりと導入したと思ったら、そこからの20分は一気にギアを上げ、トップスピードで駆け抜けます。
こんなに飛ばして大丈夫かなぁと心配していると、さらに30分間ハイテンション!
しかし、このシークエンスである人物が犠牲になると同時に、一気にブレーキがかかります。
上映時間なかばにして、ついにガソリン切れ。
ここから人間ドラマを前面に出してくるので、イケイケ気分になっている観客は少し肩すかしをくらいます。
この映画を楽しめるか否かは、このギアチェンジをどう捉えるかに掛かっているでしょう。
私は、イケイケ感をもう少し維持してほしかったと感じました。

とはいえ、ローカルルール(この作品ならではのゾンビルール)を説明する手際もいいですし、飽きることなく楽しめるエンターテイメントにはなっていると思います。
なんといっても、新幹線という閉鎖空間設定が秀逸ですね!

【余談】
ホームグラウンドと呼べるシネコンでは、2D版も吹替しか上映されていません。
これはやめていただきたいです。
私は、監督がOKを出した台詞の言い回しを楽しみたいので、初見時は原語で観たいのです。
もちろん吹替を否定するつもりもありませんので、できれば選べるようにしてほしいです。

また、本作の吹替版は、残念ながらあまり出来のいいものではありませんでした。
吹替特有の台詞回しは、本来アメリカ人の大げさな仕草・発声に馴染ませるために開発された、不自然な日本語です。
日本人と見た目が似ている韓国人にハリウッド用スキルを使われると...気恥ずかしいぐらい浮いた芝居に見えます。
(韓国語も抑揚強めの言語ですが、やはり英語とは全く違います)
主要キャストでもそういう声優が何人かいて、少ししんどかったです。
アジア人俳優用の言い回しをもう少し研究していただきたい。

特に吹替版演出を担当される方は、スキルの高いプロ声優を集めたことで満足せずに、原語の雰囲気やオリジナルの演出をいかに再現するか努力を怠らないで下さい。
同時に、そんな責任を負っていただくためにも、吹替版演出の方の地位向上(もちろん金銭面も含む)も願っています。
オリジナルの監督の代わりに声優陣を束ねる、とても重要なお仕事ですから!
じぇれ

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