きんゐかうし卿

新感染 ファイナル・エクスプレスのきんゐかうし卿のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

 

自宅にて鑑賞。韓国製サバイバル・アクション・ホラー、原題"부산행(英題"Train to Busan")"を無視した物凄い邦題。独特で特徴的なのは、感染すると発症が速く、音には敏感に反応する割に鳥目なので、だるまさんがころんだ状態が何度か繰り広げられる。更に予算的な意味合いか、アップに頼らず、窓の映り込みだけで燃え盛るビルや崩壊する街を見せるシーンが何箇所かある。ゴア描写はマイルド目乍ら、主要な登場人物がドンドン減って行くのも好感が持て、前半~大田(テジョン)駅から再発車させる迄の展開が特に小気味良い。80/100点。

・テンポや描写がスマートでクールだが、拝金主義や権威主義が見え隠れし、物語のバッググラウンドにそれらが込められていると感じた。

・誕生日プレゼントやイヤホンのシェア、或いは座席を譲り合う等、ダレ気味になりがちな登場人物の性格や背景を説明的になり過ぎずサラッと見せ、伏線はキッチリ回収されている。ただ惜しむらくは、利己主義者が複数いたりするやや重複的なキャラクターが出て来たり、意味深なC.グィファ演じる“ホームレス”が何でもなかったり、このシーケンスの為に配したと思われる登場人物がいる衒いが残るのは少々残念。

・“ソグ”を演じたG.ユは釜山出身であり、“サンファ”のM.ドンソクは、彼のパーソナルトレーラーだった事から本作出演のきっかけを得たらしい。ちなみにM.ドンソクは、米の総合格闘技イベント「UFC」の王者で、我国の「PRIDE」でもお馴染みの“赤鬼”と呼ばれたM.コールマンのパーソナルトレーナーを務めていた経験もある。

・舞台となるKTX101列車は、客車2両と接続部3両をセットとして組んだと云う。CGIは本篇の約1/3にも及んだが、車窓からの外景は演者への映り込みを考慮し、敢えてブルーバック等のクロマキー合成を使用せず、約300個のLEDパネルを設置した(『オブリビオン('13)』でも用いられた)背面投影スクリーンを使用し、更に時速300kmを自然に見せる為、複雑な照明を駆使し、撮影された。

・ライナーノーツによると、撮影は'15年4月26日~'15年8月19日迄で1,800カット全てを撮り終えたと云う。

・'17年9月現在、本国韓国で歴代六位、シンガポールでは韓国映画として初の百万ドル越えとなるスマッシュヒットとなった。これを受け、監督は前日譚となるアニメ『ソウル・ステーション/パンデミック('16)』を脚本・監督した。

・鑑賞日:2017年9月4日