ぴのした

新感染 ファイナル・エクスプレスのぴのしたのレビュー・感想・評価

3.9
期待通り、期待以上の良作。新幹線を舞台にした韓国のゾンビ映画。

大筋はありきたりではあるものの、マッチョおじさんやおばあちゃん姉妹など名脇役が光る。

こういうゾンビものってバラバラの群像劇に終始しがちな気がするんだけど、今回は全員が全員主役級の持ち味をしながら、物語として一つにうまくまとまっていくのが良いよね。最後にかけては、「まさかそうくるとは…!」の展開の連続で胸熱だった。

あと意外だったのは、随所に韓国らしさが感じられる映画だったこと。韓国の競争社会、格差社会を皮肉っている感じがするし、最初に嫌なおじさんが言う「勉強しないとああなるぞ」というセリフとか。

だからこそ、ホワイトカラーで自己中心的な主人公が知恵を絞り、利他的なブルーカラーのマッチョ(マッチョは青いTシャツ、主人公は白いYシャツを着ている)は肉体を酷使し、2人で共闘して困難を乗り越えるっていうのは韓国社会を皮肉るメッセージとして読み解くと面白い。

ネタバレになるけど、結局生き残るのは子供と妊婦っていうことで、ブルーカラー、ホワイトカラーの分断はこの世代で終わって、子供たちの時代には格差のない世代になってほしいな…っていう希望が垣間見える。

小ネタとしては、パンデミックが起きてるのに大規模なデモだと勘違いされてるところがウケる。さすがデモ大国。国家非常事態の後に「政府の迅速な対応で事態は収まりつつあります。デマに注意してください」っていう嘘っぱちの政権放送が流れるのもウケるよね。というのも、韓国は過去に何度も大統領が勝手に非常事態宣言を出して権力を増大、半独裁みたいなことをやってきた歴史があるという。

プサンだけなんとか守り抜いたっていうのも朝鮮戦争を思い起こすものがある。確かプサン周辺を残してぜんぶ北に占領された時期あったよね。

ゾンビ映画としても面白いしヒューマンドラマとしても面白い。韓国社会を覗ける外国映画としても面白い。

ちなみに僕もKTX乗ったことあるんだけど行きも帰りもすっげえうるさいいびきをかくおばちゃんがいたので、あのおばちゃんも登場させて欲しかった。