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スプリットのohassyのレビュー・感想・評価

スプリット(2017年製作の映画)
3.5
僕ほど純粋にシャマラン映画を待ち望んでいる日本人も少ないだろう。
スリラーでもホラーでもサスペンスでもない、シャマラン映画を。
しかしそんなシャマラン映画のプロである僕も、やはりそれなりの苦労はあった。
アンブレイカブルを今は亡き吉祥寺バウスシアターで観て、無駄に怒り散らしながら夜中のアーケードを歩いたのも今となっては懐かしい。
僕はまだ若くて、分かっていなかったんだ。
シャマラン映画を全く理解していなかった。

シャマラン映画はいわば「お化け屋敷」である。
その卓越した演出スキルで観るものをどこまでも引き込んでしまう。
それは伏線や思わせぶりなカットなんていう生易しいものではなくて、映画を観ているという客観的な視点を忘れさせ当事者にしてしまう。
つまり、ある設定のアトラクションに放り込まれた主人公のようになってしまうほどのパワーを持つ。

観客は見事に翻弄され恐怖と猜疑心の渦に飲み込まれるのに、ラストに差し掛かると途端にこれが映画であることを思い出し、映画的なカタルシスを求めてしまう。
翻弄されていたから尚更かもしれない、私のドキドキは一体なんのためだったの!?と。

シックスセンスのズバ抜けたドンデン返し感が際立ちすぎて、新作が発表されるたびにそれを期待され、いつもオチが云々言われてしまうのは不幸なことかもしれない。
僕はあのラスト前の現実に戻る時に空気が変わる瞬間がすごく好きだけれど、まあそこはプロとしての楽しみ方だ。

でもちょっと思い出してみてください、彼の作品はいつだってありのままを描いているんです。
解釈や比喩、トリックなんてモノとはまったく遠いところにあります。
主人公はお化けだし、不死身だし、宇宙人は存在するし、村は古いしきたりを守っているし、プールに住むのは人魚なんです。

ただそれだけ。
なのに観ている間はあんなに面白いなんて、すごくないですか?
彼が製作、脚本、監督を兼ねる限り、僕は応援し続けます。
次回作は過去最悪の設定になりそうですが、アトラクションに大切なのは設定やストーリーじゃなくて演出ですし、そんなこと言ったらアベンジャーズなんて幼稚園児でしょう。
そういう意味で言えば製作を兼ねていない「ヴィジット」は変に隙がなくて、小さくまとまって彼らしくないからあまり好きじゃないし、エアベンダーとアフターアースに関しては特に何もいうことはありません。

町山さんのツイートがネダバレだなんだと問題になっていたけれど、そんなところで一喜一憂してるのはまだ初心者です。
ラストと次回作のために設定考えただろ?っていう、プロメテウスのときみたいなエェェェェ感はありますが、刹那の演出はさすがです。
サインやヴィレッジ、ハプニングあたりを観直して、楽しみ方を身につけましょうね。
それに今回は珍しくヒロインがとても魅力的ですし。
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