Kachi

ドリームのKachiのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.0
【痛快なNASAの3人の女性の物語】

解説付きの映画鑑賞会にて鑑賞。

原題は"Hidden Figures"。IBMコンピュータが宇宙開発で本格利用される前は、ロケットに打ち上げから地球へ帰還するまでのあらゆる計算が、数学者によってなされていたこと。そして、その高度な計算は天才的な頭脳を持つ女性によってなされていたことが、隠された事実として描かれていた。

ガンディー主義を貫き公民権運動を推し進めたキング牧師の活動と呼応するわけではなく、NASAの職場では、ソ連との宇宙開発競争に勝つためという目的達成のため、イデオロギーや過去の差別意識から続く経路依存性といったものとはあまり関係なく、黒人や女性に対する差別を取り払っていった様子が説教臭くなく、素直な気持ちで物語を追うことができた。

鑑賞会後のディスカッションでは
・有色人種の議論が黒人/白人の二項対立となると、そのどちらでもない日本人は視点の起き方が難しいのではないか?
・当時の時代背景もあると思うが、皆結婚していることを前提とした描写が見られて違和感があった
などと鋭い指摘があり、作品における人物の描かれ方と監督の社会変化への感度の緊張関係がここでも露見することになった。

100点満点の作品がないことはわかっているが、うまいバランスの置き方を考えるのはクリエイター側からすれば答えのない難問、空を掴むような禅問答なのかもしれないと思った。
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