ぎー

ドリームのぎーのレビュー・感想・評価

ドリーム(2016年製作の映画)
4.0
「このIDで月にも行ける」「トイレには行けない」
セオドア・メルフィ特集2作品目。
人種差別が色濃く残る時代にNASAで活躍した3人の黒人女性を描いた映画。

この映画を見て痛感したのは、仕事はそれに携わる大勢の人の努力の結晶だということ。
大きい仕事ほど携わる人は多い。
頑張っている人、成果を上げている人がちゃんと評価されているかというと、現代でも完全にはそうなっていないと思う。
自分はそのあたりキチンとしたいし、キチンと評価されるようでいたいな。

そんな中で凄かったのが主人公3人の忍耐力。
キャサリンは能力抜群なのにお手洗いをするために800m先のトイレを使わねばならず、コーヒーポットは黒人用に用意され、機密資料は渡されない。
ドロシーはメンバーをまとめているのに、管理職には一向に上がれず、勉強のため訪れた図書館では白人専用の書棚を閲覧したために追い出される。
メアリーは昇進を拒否され、条件として白人しか通学できない学校の卒業を義務付けられる。
彼女達は決して暴力などを振るわれたわけではない。
それだけに生々しい。
キャサリンの上司ポールやドロシーとメアリーの上司、ミッチェルも差別主義者ではない。
非常に優秀なNASAの職員で、自分では偏見を持っていないと思い込んでいる。
まさに個人の問題ではなく、社会として偏見がスタンダードになっている状況がありありと伝わってきた。
そんな辛い状況にも関わらず、彼女達は努力することを決してやめず、諦めず、とうとう成果を上げ、それが認められた。
なかなか誰しもに出来ることではない。
どれだけの能力のある黒人が、女性が、挫折し諦め、陽の目を見なかったか。
想像に難しくない。

本筋ではないけど、宇宙への挑戦の裏方の活躍が描かれていたのも魅力的。
普通のSF映画では脚光を浴びるのは、この映画でいえばイケメン宇宙飛行士ジョン・グレン、頑張ってもプロジェクトの責任者ハリソンぐらい。
この映画ではむしろ、着水範囲や減速地点を計算するメンバー、遮熱板を設計するメンバー、検算するメンバーにフォーカスされていた。
PCもまともにない時代に、凄いことだと思った。

1番印象に残っているシーンは、離席が多いことを叱責されたキャサリンが人種差別についての実情をとうとう訴えて、責任者ハリソンが人種差別用のトイレをぶち壊す場面。
それまでどんなに非道い仕打ちを受けても弱音一つ漏らさなかったキャサリンの感情の爆発だけに、どれだけ辛い思いをしてきたのか伝わってきた。
また、ハリソンの行動も勇敢だった。
彼は多分決して人種差別撤廃の活動家ではなかったけど、社会の常識が正しくない時に、逡巡することなく正しい行動をしていて滅茶苦茶格好良かった。

それにしても、どちらかというと彼女達の精神的な強さに焦点が当てられた映画で、だからこそ名作なんだけど、彼女達の能力の高さは尋常じゃなかったんだろうなと思う。
特にキャサリンが黒塗りの資料からアトラス計画の失敗を導き出した時や、重要な会議で誰もできない計算を瞬時にして見せた時、ドロシーが先見の明でプログラミングをメンバーに学ばせ常勤の職を獲得した時の爽快感は凄かった!
あれだけ障害がある状況でこれだけの功績を残しているのだから、全てが彼女達を支えてくれる環境だったらどうだったのだろう。

日常的に生活していて人種差別や性差別を感じることがない自分はもっと頑張らなきゃな。
そう思った。

◆備忘ストーリー
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ドリーム_(2016年の映画)
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