しんご

レッド・スパローのしんごのレビュー・感想・評価

レッド・スパロー(2017年製作の映画)
3.8
感想としては「これロシア国民怒りませんか?」というもの。時代設定は割と現代ぽいのに諜報手段のメインが暴力とハニートラップ、用済人員は直ちに粛清されるロシア描写は果たして意図的なものなのか...。

夢を奪われたプリマが病気の母親と共に自由を掴むためにスパイの世界に入るというシンプルなストーリーながら全体に漂う暗く退廃的な世界観が重い。

同じく女性のスパイが活躍するところで言うと「アトミック・ブロンド」(17)に比較されるところでしょうが、本作はアクションメインでなく情報戦が主軸なのでとにかく地味だけど頭を使う展開が多め。どちらかと言うと「裏切りのサーカス」(11)寄りのスパイ映画かと。

「アトミック~」でもシャーリーズ・セロンがボコボコになるシーンがありましたが、本作のジェニファー・ローレンスの扱われ方は更に苛烈さを極める。身体的にはもちろん精神的にえぐられ続ける描写が多すぎて。前半のスパロー育成機関の話がとにかく胸糞で酷い。人権など皆無で与えられた選択肢は「スパローになるか死ぬか」の2択のみ。自分が一番嫌と思う相手の欲望を満たす訓練をする展開には「もうやめてくれ」と心の叫びが。ジェニファーってこういうボロボロになる役柄多いよね、若いのにチャレンジングというか役者魂がありすぎて尊敬する。

2時間20分という長尺の割と後半くらいまでジェニファー扮するドミニカがヘビーな戦いを強いられるから最後に繰り出す会心の一撃にはカタルシスがある。...と思いきやのあのラストシーンの渋さたるや。ハッピーorバッドエンドと両方解釈できそうなあのドミニカの表情が観客を釘付けにするし、あのシーンだけでこの星を付けたいとさえ思えた。

「人間の欲望はパズル。欠けたピースになれば操ることができる」...この台詞が全体に利いた重厚スパイ映画。
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