ねーね

君の名前で僕を呼んでのねーねのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0
ひりつく太陽、汗ばむ身体、水のきらめき、素直になれないピアノの旋律、君を追う秘密の視線、真夜中のベランダ、ふたりだけの名前、ぶかぶかの青いシャツに想いを馳せたとき、
その苦しさに耐えきれずわたしはボロボロ泣いてしまった。
劇場が明るくなるまで、涙がずっととまらなかった。

夏の恋は美しい。
けれど、過ぎ去るのはあまりにも一瞬だ。

17歳の少年と24歳の青年の、甘くほろ苦い叙情詩に、胸の奥底をえぐられる。
多感な少年の衝動、揺れ動く想い、分別ある大人で"あらねばならない"青年の自制と葛藤。
彼等の繊細な心の動きが、美しい北イタリアの自然と共に丁寧に描かれるさまは見事だった。

輝くような肌と肌が触れ合う姿の純粋さが眩しすぎて。辛すぎて。
男同士だから、なんて括りはなんの意味もなさない。
人を好きになることのもどかしさと幸福、そして堪えがたい痛み。
それはきっと誰もが通る道。

けれど、誰かを好きになること、誰かを懸命に愛することは、いずれ訪れる心の痛みでさえも大切な人生の礎にしてくれる。
当たり前のようで気づけないそんなメッセージに、少なくともわたしは救われた。

君の名前で僕を呼んでくれれば、僕は愛する君と身も心も一緒になれる…
それは究極の愛のかたちであり、
かけがえのない想い出として一生忘れることはないだろうと、信じたい。
ラストシーンのエリオの表情が、そのすべてを物語っていた。

作品に優しく寄り添う、スフィアン・スティーブンスの切ないメロディーも良い。
ねーね

ねーね