Bluegene

君の名前で僕を呼んでのBluegeneのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

なんだかとらえどころのない、奇妙な映画だった。

北部イタリアに住む教養があり裕福なユダヤ人一家。家族構成は美術か文学が専門のユダヤ系アメリカ人の大学教授と、やはり美術に造詣の深いユダヤ系フランス人の妻、音楽の才能がある17歳の一人息子。教授は毎夏、バカンス中に資料をまとめるためのインターンを募集している。今年は24歳になる大学院生がやってきた。

話としては息子のエリオがこの大学院生と恋におち、別れるまでの「ひと夏の経験」を描いた他愛ない映画なのだが、二人がパンツ一丁で湖やプールや川でバチャバチャするかたわら、アプリコットの語源とは何ぞやとか、プラクシテレスの模刻が見つかったから行ってみようとか、なんかおいしいものをやたら食べていたりとか、奥さんはメイドがいるから何にもしてなくていいなとか、要はそういう「庶民には手の届かない素敵なバカンス」が嫌味なく詰め込まれている。不労所得のある高等遊民てこんな生活をしてるんだ

映像はひたすら綺麗だし、英語とイタリア語とフランス語が混じった会話もなんだか耳に心地いい。恋に落ちた二人は同性同士だといって悩みも葛藤もなく、周囲も「あいつらヘンだぞ」というわけでもなく、すべては夏の夜の夢のように幻のように過ぎ去っていく。

しかし最後の教授の告白で、これって教授の妄想だったんか…と納得がいった。なんで80年代という設定なのかも。雪の降りしきるラストシーンでは、あの夏に思い切ってやっとけばよかったなー!という、悲しい中年男の叫びが聞こえるようだった。
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