Kuuta

機動戦士Zガンダム III -星の鼓動は愛-のKuutaのレビュー・感想・評価

2.7
結局一気に見てしまった…。

例えばエヴァ「破」では、周りの性格がちょっとずつ大人になっており、 TV版と別人なシンジ君の行動に納得感があったし、「若い世代に向けた新解釈」という意図がきちんと作品になっていると思えた。

一方、同じ志であるはずの今シリーズで、ラストの改変に向けて、TV版と異なる伏線や、カミーユの心境に関わる新要素はどれほど織り込まれていただろうか。私には、丁寧な準備もないまま、ただ結論をひっくり返しただけに見えた。

それだったら別にどっちのラストでも良くねえかというか、3作かけてあの結論に向けて語り直した意味がイマイチ見えなかった。エヴァと比べるのは酷なのかもしれないが、差は歴然としている。

主要人物は2作目までに登場しきっており、残された人間ドラマはレコアさんの裏切りくらい。戦闘シーンがかなり長いが、ちゃんと描写が出来ていない人が死んでいってもあまり盛り上がらない。

TV版と共通して良かった所として、Zにおける女性について書いておきたい。

男社会で生きる女性の問題は、カミーユの戦う根幹を為している。彼は、仕事に専念する事で女としての充足を諦めた母に、悲しみや怒り、喪失感を抱えている。

だが、カミーユはエマさんやレコアさんに母の姿を見ながら、戦場の女たちと出会い、成長し、シロッコと対峙するまで行く。

シロッコは女性を「道具」として搾取する。妻の苦しみを知りながら不倫し続けたカミーユの父は、利己的なシロッコと重なる。シロッコ戦はカミーユにとっての父殺し。擬似的な母に育てられ、母の悲しみを知り、男になったカミーユが父の影を乗り超えるお話。

カミーユの女性版がファだ。私はファがとても良いキャラだと思っている。カミーユは元々天才だが、彼女は単なる幼馴染。だが、彼女もまたレコアさんとエマさんの背中を見て成長していく。

この大人の女性2人は、実に対照的な運命を辿っている。

レコアさんは軍人として優秀だが、それ故に男に「道具にされる」(ジャブローで辱めを受ける)。だから、1人の人間としての充足を求めてティターンズに移る。彼女の選択は全く否定できないし、それを「軍人の理屈」で批判するのがいかに筋違いな事か。

一方、エマさんはレコアさんの逆で、軍人としての信念を貫くため、非道な作戦を取るティターンズを捨てる。結果的にヘンケン艦長以下、クルーに愛される存在となり、「軍人の仲間」が彼女を庇う終盤の展開につながる。

パイロット(軍人)として、1人の女として、カミーユを支える存在になるファは、2人の良いところを受け継いだんだと思っている。

普通の女の子だった彼女は、ハマーンやシロッコといった化け物との戦いに首を突っ込み、エンディングに絡むまで変化する。ファーストのフラウボウと比較しても、Zのテーマを象徴しているように感じる。

…というような事はTV版を見れば分かるが、映画3本だけで飲み込める人は皆無だろう。今シリーズでがっかりして、TV版を観る人が減ってしまうとしたら、とても悲しい事だ。54点。
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