ニャーニャット

トゥルー・グリットのニャーニャットのレビュー・感想・評価

トゥルー・グリット(2010年製作の映画)
3.9
久し振りに『トゥルー・グリット』を観る。動画配信サービスだとどうしても過去に観た作品ばかり観てしまって、新しい作品を観るのが億劫になってしまう。
けど、この作品ほんと好きなんだよなあ。

コーエン兄弟っていつも変化球ばかり投げてるんだけど、初めてどストレートぶつけてきたなと。

ラストで馬が、オヤジが、夜の荒野を駆け抜ける。それに感動してしまう。

序盤は西部劇というだけあってゆったりストーリーが立ち上がり、その後も景色、気候の移り変わりとともにゆったり進んでいくんだけど、マティーとコグバーンも関係を深めていく。それが分かりやすい感じの関係の深まりじゃなくて、なんか表面的にはお互い憎まれ口ばっかり叩いてて、一見すると何も関係性が変わってない感じなんだけど、そこは時間の経過とともに何かじんわりと変化が生まれていることを感じさせる。

そんなロードムービーな作りはフェリーニの『道』を彷彿とさせる。


「父」を失った娘が父の仇をとりにいくのが表のテーマではあるんだけど、実は最後に「父」を取り戻すという話の構成になってるのが実にうまい。
復讐の代償を支払うことにはなるんだけど、結局マティーの腹の底に澱んでいた世界との蟠りは、復讐によってではなく、父性にもう一度包まれることによって昇華されていく。

あと、この映画を観ての教訓は、自慢話をしてる酔っ払いには稀にほんとのことを言ってる奴もいるってことか。