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こころに剣士をのan0nym0usのレビュー・感想・評価

こころに剣士を(2015年製作の映画)
3.7
エストニアは北欧の小国。
初めて聞く…なんて人もいるかも?
実はSkypeを生み出したIT先進国だったりします。

1950年初頭のエストニアはナチスの占領下からソビエトによる再占領と連邦への併合が行われた後のスターリンの軍事政権下。

望まぬともドイツ兵として戦っていた過去を持つ人々が、ソ連の秘密警察によって収容所へ送還されるなど、人々が政権の移り変わりに翻弄されていた時期です。

それによって父親を失った子供達が溢れていて…作中での説明は最低限なので、そういった時代背景を頭の片隅に置いて、観賞した方がいいかもしれません。

北欧映画の御多分に洩れず、何処か閉塞感のある暗めな画と冷えた雰囲気。

エンデルが子供たちに教えるのはフェンサーの技術だけではなく、精神的な強さ。
だから、彼は逃げ出さなかった。

それは…幾度となく占領され、それでも独立を勝ち取ったエストニアという国の姿。

窮地に立たされている時こそ、真価が問われる。自分を奮い立たせるのは…こころに宿した剣士の矜持。

静かで、落ち着いたトーン。
映画としては賛否が分かれるかもですけど、日本で言えば武道の精神も、真髄はきっと静謐であることだし…間違ってはないはず?

約100分とコンパクトだし、展開も駆け足なんだけど…しっかりと優しさを残したラストも素敵だし実話ベース…こういう北欧テイストは個人的には嫌いじゃない。

疲労感がある時は、これぐらいの作品にとても安心する…夕涼み的な穏やかな清涼感。

もう少し丁寧な作りだったら、グッと良くなるんじゃないかな。この年代のヨーロッパ史に造詣が深い人にならオススメです。
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