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笑う故郷のemilyのレビュー・感想・評価

笑う故郷(2016年製作の映画)
3.8
 故郷のアルゼンチンを離れて、スペインで30年以上暮らしているノーベル賞作家のダニエル。アルゼンチンの故郷から市民名誉賞の申し出があり、ダニエルは30年以上ぶりに故郷に帰ってみることにする。そこで待ち受けていたのは変わらない現実。思わぬ展開に巻き込まれていく中で、自分自身に向き合う。

 逃げるように故郷から出たダニエル。長い月日の中で、期待感を持ちながら故郷に帰る。ブラックコメディ満載で、次々と飛び火を浴びていく主人公。爽快な音楽にのせる訳ではなく、どこかドキュメンタリーを思わせるタッチで、細部に皮肉感満載の笑いを敷き詰める。ダニエルが描く物語はすべて彼の故郷をベースにしており、フィクションとノンフィクションが交差し、ブラックユーモアはやがて大惨事へ、閉鎖的な田舎町での人々の固定概念はダニエルがその街を出たあの日から何も変わっていない。
すでに彼はよその人間であり、彼の故郷はもうここにはないのだ。人々の本音と皮肉な展開がやがて笑うしかないラストへ。

 時の流れと共に何かの変化を期待して、思い出は美化され訪れた故郷。しかしそこに住む人たちは変わらない。結局ダニエル自身が変わらなくては、そこに住んでる人たちも変わらないのだと思う。そしてダニエルにとっての故郷はもうここにはない。そのことを身を持って知る事で、また前向いて進めるのだと思う。またさらにその上いく皮肉なラストには笑いしかない。結果田舎に帰った事は彼にとって非常にプラスになったのだ。なんとも皮肉だが、人生とはそんなものである。
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