笑う故郷の作品情報・感想・評価

笑う故郷2016年製作の映画)

El ciudadano ilustre/The Distinguished Citizen

上映日:2017年09月16日

製作国:

上映時間:120分

3.9

あらすじ

世界的な成功をおさめた作家ダニエル・マントバーニは、生まれ故郷であるアルゼンチンの町サラスから「名誉市民」としての招待を受け、40年ぶりにヨーロッパから帰国する。彼の小説はサラスでの思い出から着想を得たものも多く、故郷の人々から盛大に歓迎される。幼なじみや昔の恋人とも再会しご満悦のダニエルだったが、まもなく手痛いしっぺ返しを食らうことに・・・。

「笑う故郷」に投稿された感想・評価

のどか

のどかの感想・評価

3.8
いい意味で笑えない‥面白かった‥

1番怖いのは善意の皮を被った人間。

田舎には人情があるという、クソッタレなテンプレをひっくり返してくれる怪作。
アルゼンチン出身の作家ダニエルは、今ではスペインを拠点として活動をしていた。ノーベル賞を受賞し、輝かしいキャリアをもった彼は世界各地から引く手あまただったが、そういった表舞台に出ることを嫌った彼は全て断りを入れていた。しかし、その中で彼が生まれ育ったアルゼンチンの故郷サラスから、名誉市民の称号を与える招待だけは悩んだ末に受けることを決意し、40年ぶりに祖国の地を踏んだ。町は国際的文化人の里帰りに沸き上がり、彼自身も青春時代を共に過ごした旧友や、初恋の相手などに出会い思い出話を膨らませていく。しかし、様々な町のイベントに参加していくに従って、町の空気は思わぬ方向に転がり始めていく。。2016年ヴェネチア国際映画祭主演男優賞、米アカデミー賞アルゼンチン代表に選出されたヒューマンコメディ。監督は、「ル・コルビュジエの家」のガストン・ドゥプラットとマリアノ・コーンが共同で勤めています。

「笑う故郷」という題名から、ホンワカ心が温まる帰郷物語と思いきや、ちょっと期待をいい意味で裏切ってくれるブラック・ユーモア作品でした。本作を観ていて、どこか似ている作品を最近見たなーと思っていたのですが、少し枠組みは違えど、同じような人の憧れや羨望が妬みや差別に変わっていく、昨年見た「ゲット・アウト」に印象がよく似ています。あちらはスリラー&ホラーの色合いが強いので、作風的には少し違うのですけど、名声を得た主人公ダニエルに注がれる町の人々の羨望や尊敬の念が、次第に、俺のおかげで有名になったんだとか、同じ町の出身なのにたかだか有名になっただけで人が変わりやがってとか、俺もちょっとチャンスがあったらお前みたいになれたんだというような、妬みや恨みに近いような感情に変わっていく。きっと本作を観る多くが、主人公ダニエルの視点からモノを見るでしょうから、作品を観続けていくと彼が感じた不快感や居心地の悪さみたいなものを追体験させられる、決して気持ちのいい作品ではないと感じることでしょう。でも、これが本作の肝となっている部分でもあるのです。

僕の出身地にも、学者や国会議員や、アーティストになった有名人はいます。どこの町にもそういう有名人になった人はいるでしょうけど、よく疑問に思うのは、彼ら彼女らはそこで生まれはしたものの、成功したのはずっと離れた土地であることが多くて、今は全く住んでいないのに名誉市民だったり、名誉町民だったりに選ばれるってどうなんだろうなと思ったりします。特に、スポーツ選手なんかは中学、高校で(下手したら、小学生でも)スポーツ留学で県外に出ていくことが多いから、オリンピックで何をしたとか、プロで何の記録を上げたとかに、生まれ故郷が絡むことって、ほんの相乗りに過ぎないですよね。地域振興の意味合いも大きいんでしょうが、違ったことにお金を使ったことがいいのにと思ったりします。

まぁ、そういった愚痴は関係なく、本作は冒頭の和やかな雰囲気から、人や田舎町のドロドロした人の感情が中盤以降に一気に噴出してきて、それをラストで鮮やかに切り返す様が見事の一言。ラスト〇〇分の驚愕、、という宣伝文句はないですし、よく観ていないと何が起こったのか分からないのですが、この反則ともいえるような終わらせ方に映画作品としての巧妙さというか、まるで文学作品のような味の良さを感じてしまいます。ただ、(繰り返しになりますが)観ていて決して気持ちの作品ではないので、ラストの上手さがあっても、僕の評価は少し微妙なところです(笑)。
nagisa

nagisaの感想・評価

4.0
sc-2
憎めない登場人物たちのなかで、名声を得た主人公だけが嫌われもの。
彼に近付く故郷の友はみんな敵。
好きです。この作品。
hirogon

hirogonの感想・評価

3.9
冒頭、ダニエル(オスカル・マルチネス)のノーベル文学賞受賞の場面。
受賞スピーチが終わった後、少し間をおいて拍手が起きますが、内容とともにこの間が妙に居心地が悪い。
スピーチの内容がダニエルの人物像を象徴していて、物語の伏線になっている感じがあります。思っていることを素直に表現するので相手への配慮にかけるのです。芸術家などの表現者としては必要な資質なのでしょうが…。

ダニエルは、アルゼンチンの田舎町サラスの出身。小説家を志してヨーロッパに渡り、とうとうノーベル賞作家にまでなったのです。
ノーベル賞作家として忙しい日々を送るダニエルは、各種の招待や講演依頼を断っていた。
故郷サラスからの招待も断っていたのだが、何故か直前になって招待を受けると秘書に告げます。
さらに、普通なら秘書を同伴するのに、今回は「一人で行く」と言い張ります。

ダニエルにとって、故郷サラスは、もう戻ることはないだろうと思っていた街。
何故、急に招待に応じる気になったのか?その辺の説明はないので、真意は不明なのですが…。
ダニエルは、故郷サラスの体験をモチーフにして小説を書いてきたので、新しい”サラス体験”が必要と考えたのかも知れません。

久しぶりに故郷サラスに帰ってきたダニエル。
各種の歓迎会、講演会、絵の審査員、友人や街の人たちとの交流、など、忙しい時間を過ごす。
ダニエルにとって、サラスに残した思いがあるとすれば、元恋人のイレーネ(アンドレア・フリヘリオ)。今は、旧友アントニオ(ダディ・ブリエバ)の奥さんになっています。

サラス滞在の中で、ダニエルと街の人たちとの関係が少しずつ拗れ始めます。
特に、絵の審査結果をめぐる落選者との確執や、イレーネのことでアントニオとの関係が微妙な雰囲気に。
ダニエルは、アントニオの娘フリアとの間も、ちょっとややこしい状態になっています…。
(アントニオやイレーネはそのことも知っていた?それにしても、フリアのダニエルに対する行動も相当なもんです)


(以下、ネタバレ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


サラス滞在も残すは後1日となった頃、イレーネは、ダニエルに「早く街を去って!でないと危ない」と警告に来ます。
しかし、車の故障でイレーネは家に別の車を取りに帰ります。でも、やって来たのはアントニオとフリアの恋人。
アントニオとダニエルは、その夜に狩りに行く約束をしていて、アントニオはダニエルに「待っても、イレーネは来ないよ」と告げる。
怪しい雰囲気が漂う。この辺は、ちょっとドキドキするようなサスペンス仕立ての展開。

狩りの現場につくと、アントニオはダニエルに対して溜まっていた不満をぶちまけます。
そして、逃げるダニエルの足元に何発か発砲。脅かすだけで、殺すつもりは無いようです。
しかし、一発の銃弾がダニエルの胸を貫きます。フリアの恋人の仕業でした。

狩りに向かう場面で、「車を見送る街の人の描き方が現実っぽくないなあ」という感じがあって、何となく「ダニエル、実は死んでいないのでは?」という予感はしていました。

場面は変わって、どこかの会場。そこに現れたのはダニエル。
新作の本の出版会見の場面でした。
「この本も故郷サラスが舞台で、その上、自分が主人公。現実と架空の割合はどの程度ですか?」と、記者からの質問。
「現実かどうかが重要かね?」「真実はない、あるのは解釈のみ」と答えるダニエル。

本の内容は、映画で描かれてきたダニエルのサラス体験のようです。でも、映像自体、全く事実のみで構成したのか?架空の話が混じっていたのか?判然としない感じはありました。

そして、胸の傷を見せて「この傷は?」と周囲を煙に巻くダニエル。
胸の傷が、あの発砲による傷だとすると、サラスでの出来事は全て事実だった?狩りに行くあたりから架空の話っぽいと思っていたのだが…。

本作で監督が描きたかったことは?
・社会的成功者の故郷への思いと、成功者から見た故郷との関係性。
・逆に、故郷の色々な立場の人たちから見た、故郷出身の社会的成功者への感情。
・または、小説家の体験と架空の話が判然としない雰囲気とラストのどんでん返しのインパクト。
といったところでしょうか。
クセのある登場人物達と巧みなストーリーで、”人間関係って一筋縄ではいかないなあ~”と思わせる作品でした。
田舎の人々×インテリ作家。シニカルな大人コメディ@アルゼンチン

スクリューボールなドタバタ喜劇をイメージしてたんですけど、案外主人公のインテリが糞野郎じゃなくて紳士だった(?)ので、感情移入しながら観れちゃいましたね。反感買ってた芸術論なんかも、まあ正論だなと思いましたし。

逆にその分、田舎の人たちのポンコツっぷりがかなり毒っ気たっぷりに描かれてて、途中から徐々にですけど、「おやおや?どこか様子が変ですよ?」って感じで変貌してって、ついにはホラーの様相まで呈してくるという…。さすがアルゼンチン映画!(よくわからないけど)って感じでしたね。オチも見事でよく出来てましたよ。
チェ

チェの感想・評価

4.3
閉館するみなみ会館にて。
みなみ会館でみるべき作品でした。
かなりおもしろデフォルメはされてますがこんな人たちそこらじゅうにいる。
公開時観ていたら去年のランキングはいってたかな~、と。
良くできた話。構成、展開が良かった。
最後のほうは恐怖さえ感じた。
ポスターと邦題でてっきりコメディかと思っていたので、予想外だったが面白かった。
よくできたストーリーだなーと思う。田舎のどうでもいいかんじ…笑
しかしながら日本だったらもっと陰湿だろうな、ラテンだったからこうだけど。
最初のシーンからクソ野郎で、最後のシーンまでクソ野郎だった。もちろんほめてますとも!!
これと『ミシェル・ウエルベック誘拐事件』を二本立てで観たい。陰性と陽性の作家ものコメディ
>|