しゅん

ムーンライトのしゅんのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
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色の映画。対象との距離の近さや浅い被写体深度、あるいはマイノリティを主人公にした映画というポイントはロウ・イエ『ブラインドマッサージ』を想起させるが、印象は驚くほど違う。汗ばんだ叙情を伝えるロウ・イエに比べ、バリー・ジェンキンスはどこまでもクール。薬物依存もいじめも同性愛も言葉足らずにしか表現されず、それは主人公シャロンの頑なな沈黙に通じるものがある。代わりに雄弁に語りかけるのがネオンカラーの暗い青や赤であり、役者たちの黒く輝く肌である。カメラ移動が激しく、かつぼやけがちな映像の中でも色のインパクトは残り、冷たく抑制された美しさが脆い人々の弱いつながりを鮮やかに染める。「月明かりの下ではブラックの少年たちはブルーに見える」という詩的な原題はこの映画の静謐さを見事に象徴している。音楽の使い方もよかったけど、車乗ってるときに一瞬流れるブラジル音楽が謎だったなぁ。フアンの家の壁に富嶽三十六景が飾られてるのも不思議。
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