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薔薇は死んだのemilyのレビュー・感想・評価

薔薇は死んだ(2015年製作の映画)
3.5
 第1次世界大戦前夜のドナウの真珠ブダペスト。高級娼婦エルザの遺体を乗せた大きなバスケットが流れ着く。そこに至るまでの4日間を3人の女性を交えて描く。

 ゴシック調のインテリア、薄暗い色彩の中エルザの気怠い空気感とアンニュイな仕草が、異色の透明感と共に溶け込む。女同士の嫉妬は鏡越しや、閉鎖的なカメラワークで、女性のミステリアスさと色気を交差させる。背景が上品な事もあり、描写は常に高貴な雰囲気を漂わせ、香水の香りまで漂ってきそうなほどどこまでも”女臭”が漂う。3人の女性達。誰もがそれぞれの罪があり、誰もが違う魅力を放っている。まじわうことで導かれた必然ともいえる悲劇。しかしその描写からはそれぞれの魅力と苦悩を見事にあぶり出し、誰もが悪人でありながら共感できる部分を残す。この世に悪人も善人もいない。両面を持っていることを認める事で、人は善人に近づけるのだ。
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