Bigs

アンダー・ザ・シルバーレイクのBigsのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

面白い映画だったし、観てから少し経って思い返すと変わった手触りの映画だったな〜と思う。
この作風がこの人独特の持ち味になってくるのか、これからの時代の主流となっていくのかはわからない。けど今の時代らしさが詰まった1本だったのかなと思います。

表面的なストーリーで言えば、まだ何者でもない若者(まあそんなに若くもなさそうだけど)が、LAハリウッドの中で現実と妄想の境界線を行ったり来たりしながら謎解きを進めていくという話。
ここでこの作品が特異な点は、この物語が悪夢的なのか?というところ。宣伝のコピーが"悪夢版LALALAND"だったり、感想でも"悪夢のよう"と評している人が散見された。確かにこの物語自体が主人公の醜い妄想なのではないかと思わせる場面(途中貯水湖の中で撃たれる女の様が主人公の持つ雑誌の表紙と類似していたり)もある。ただ、印象になっちゃうけど、全体的な手触りとしては悪夢や醜い妄想・幻想といった否定的なものというよりは、むしろこの物語や主人公を肯定的に捉えてるように思う。個人的にも「仕事は何してる?順調か?」と自分との優劣を計られてるような現実世界こそ悪夢で病んでるなあと思っちゃう。そこが今の時代感覚なのかなと思った。「そもそも周りの世界が病んでるんだから"酔っ払わなきゃ"生けていけないでしょ」というある種の開き直りのようなポジティブさ。酔いは覚めなきゃいけない、いつか覚めるといった自己反省的な部分も希薄。
だから過去の類似モチーフの作品にあったネガティブな印象(それはそれで面白いけど)があんまりない。マルホランドドライブ、サンセット大通りとか。不気味で神経症的で狂った世界なんだけど、その事態に対して肯定的という観たことないバランス。
思えばイットフォローズも不思議な手触りだったな。怖い部分が多い映画なのは確かなんだけど、必ずしもホラー映画と言い切れなくて。振り返ると勿論怖い部分も思い出されるんだけど、どこか暖かいような懐かしいようなポジティブな場面・ノスタルジックな場面も多く思い出す。
こういう独りよがりにならないギリギリの自己肯定的な感覚ってやっぱり今みたいな時代を生きていくには必要だと思うし、だからこそ響く人には響いてストレートな応援歌として届くのではないかと思う。これからもデビットロバートミッチェル監督の映画は追っていきたい。
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