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退屈な日々にさようならをのYAEPINのレビュー・感想・評価

退屈な日々にさようならを(2016年製作の映画)
4.2
カネコアヤノの出演を観るのと、楽曲としてしか知らなかった『退屈な日々にさようならを』が、作品のどう調和するのか気になって鑑賞。

この映画が公開された4年前の時点では、カネコアヤノを当時知らなかったが、今よりも瑞々しさと幼い危うさがあって可愛かった。

東京でうだつの上がらない映画監督と、郡山で造園業を営む男という、一見全く無関係そうな2人の間で、様々な人間関係が絡み合っていく。

こういった、蓋を開けると狭すぎる世界の中で繰り広げられる群像劇が好きなので、興味を持って観ていた。

物語のキーパーソンとなる今泉太郎、次郎の双子を演じる内堀太郎さんが素敵だった。
穏やかで意思は強そうではないが、しなやかに生きる太郎と、センシティブで内省的、鬱屈とした雰囲気のある次郎(山下義人)という、異なる人物をしっかりと演じ分けていて、とても同一人物には見えなかった。

基本的には静かにストーリーが進行していくが、東日本大震災を背景に抱いていることも含め、突如として死が降りかかる。
その一方で、とある死体の前では特殊な恋愛感情が交差し、閉ざされた未来とこれから始まる未来のコントラストが鮮やかだった。

また、全体として食卓の表現が面白かった。
無言でパンの耳を相手に押し付けているシーンや、延々と食卓のみを映しながら会話を聴かせるシーンがあり、特徴的だ。
後者では、家庭的で健康的な田舎料理を囲み、穏やかに会話をしながら、味の好みが微妙に噛み合っていないことがうっすらと伝わる。
太郎の相棒、千代は、気まずくなるような食事シーンでも、黙々とさくらんぼや素麺を頬張っていて、図太く構えた性格であることが分かる。
食卓でのやりとりを通して、その場の人々の関係性が表現されていた。

キャストの名前と役名を揃えていることが多かったが、特別な人の話ではない、すぐ身の回りにいる人と、そこで起こりうる出来事を描いている、ということだろうか。
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