グレーのスーツ、地味なネクタイ、きっちりと整えられた髪。よく独り言を呟く神経質な男、田中。一見普通に見えるが、職業は大村組幹部というヤクザ者。時には素人をいたぶり、ケチな取り立てなど、若い衆がやるような仕事もこなす日々。独身だが、自分の情婦・芳江に素人娘を高級娼婦へと育てあげるようなことまでさせている。大村組の若頭でありながら、組長に疎んじられている田中は、危険な仕事ばかり回される日々に、苛立ちを募らせていた。そんなある日、組長の大村は、田中に新しい組を作れと命令する。上納金だけ絞り取り、跡目は若い倉内に継がせようとしていることを察する田中。もがき苦しみながら極道という修羅場をしたたかに生き抜こうと、田中は野心を燃やす――――。
交番勤務の巡査・菊川玲二は、正義感は人一倍強いものの、警察学校を史上最低の点数で卒業し、巡査になってからも始末書ばかり書かされる日々。そんなある日、玲二は署長の酒見に呼び出され、突然クビを…
>>続きを読む明治41年奈良・小森で生まれ育った誠太郎と孝二の兄弟。日露戦争で父親を亡くした2人は、しっかり者の祖母・ぬいと、心優しい母・ふでに育てられた。だが、学校に入ると、被差別部落だった小森の子供…
>>続きを読む町は地元組織の後藤田組と、産廃の土地を狙う蛭子組の子飼の争いに巻き込まれていた。温泉と争いしかない田舎町に、独りの男がフラリと現れる。その男は、妻と子供を惨殺された元マル暴担当の男(白竜)…
>>続きを読む女衒を生業とする富田岩伍は、旅の途中で拾った少女・菊を連れて帰る。やがて菊が美しい娘となり、2人の息子もそれぞれ成長していたが、岩伍の妻・喜和の心痛は竜太郎の病弱と健太郎の放蕩だった。さら…
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