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サーミの血のmomokaのレビュー・感想・評価

サーミの血(2016年製作の映画)
4.3
シンプルながらも余韻が残る作品。
物語に大きな起伏がある訳でもなく、淡々と静かに進んでいく。好みの雰囲気だった。

失礼ながらも、スウェーデン北部のラップランドで暮らす、先住民族サーミ人の存在はこの作品を観て初めて知った。サーミ人に向けられる、軽蔑や好奇の眼差しや侮辱の言葉の数々。観ているだけでも苦しくなる。

そうした閉鎖的な世界から逃れようと自由を求めて都会に出ようと決心する、サーミ人の主人公エレ・マリャ。差別の目を向けられたことのない自分なんかには決して分かりもしない強い気持ちが、彼女を突き動かしていたのだろうと感じた。
しかし、彼女にとって自由を手に入れるということは、故郷を捨てるということにもなる。そんな彼女が晩年に自身の妹に許しを乞う姿は胸に迫るものがあった。何か罪を犯した訳ではないのに謝罪の言葉を言わずにはいれない。それで、彼女は果たして本当に ”自由” というものを手に入れることができたのだろうかと考えてしまった。

いつの時代もどんな世界にも人種差別というものは存在する。自分もしらないうちに、そうした差別に加担してしまっているかもしれない。そうならないためにも、自国や他国の歴史をしっかり学ぶとともに、自身が発する言葉に責任を持つことの大切さを改めて感じた。

また、本作では、サーミ人の役柄は全てサーミ人の方々が演じており、アマンダ・シェーネル監督の父親もサーミ出身だそうだ。だからこそ、描ける世界観が心に響いた。良かったです。
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