ベルサイユ製麺

星くず兄弟の新たな伝説のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

星くず兄弟の新たな伝説(2016年製作の映画)
3.1
…星くず兄弟がひっそりと復活してました。(小声)
恐らくはオリジナルの公開から30周年のタイミングでって事なのでしょうけど…なんか侘しくも有りますね。8〜90年代バンドブームの頃のバンドが、なんやかんやで結局再結成するのと同じ種類の侘しさが…。


時は“明成”27年。どのぐらい先か、或いはパラレルかは分からない東京のとある下町。
小さなバーのしがないマスター、シンゴ。かつてはスターダストブラザーズとして活躍した、あのシンゴ。それが今や、客の高校生にからかわれながら“過去の栄光を懐かしむおじさん”である。
…高校生どもが整形手術の話をしていたのを思い出したシンゴは、かつての相棒カンと共に若返り手術をして、スターダストブラザーズ再結成でもう一花咲かせようと企てたんだ!


…コレは強烈に…ムズムズする。
取り敢えずルックが良くない。オリジナル版の手書きの背景やストップモーションアニメはグレートアマチュアリズムって感じがして嫌いじゃなかったんだけど、今作は薄っぺらいCGを多用してて、そのクオリティの低さは単なる“やっつけ”に見えてしまう。“やりたいからやった”では無くて、“とりあえず出来るからやった”という風に。
今作の構造上の最大の特徴は、画面に撮影クルーや監督が意図的に映り込むメタ構造です。そもそも映画を撮っているところの映画なのだ…と。でもなんか別段目新しくも無いし、いろいろ行き届いていない言い訳みたいに思えちゃうけど…。

出演者。
完ちゃーん!お年を召してもニコニコしてて最高です!…が、久保田慎吾・高木完のスターダストブラザーズは冒頭だけで、以降は若返り施術をしてヤング&プリティな俳優2人のリブート版スターダストブラザーズに交代します。このお二人どうやらライダー俳優らしい。同僚に確認したところ「“アンク”と“グリス♡”」との事でした。グリスの人、若い頃の吉田豪に似てるな…。浅野忠信が結構重要な登場人物を演じてるのですが、彼の敢えての緩い演技やフィクショナルな存在感が凄く作品のトーンにマッチしてました。全身neighborhoodでキメキメおじさんでしたな。

ストーリー展開は、宇宙船で月の都市へ→ロックスターになる為に伝説の“ロックの魂”を探し求める→アクシデントで女体化(マジです)…と、なんでもござれのハチャメチャ(←80’sノリね)です!今作じつは脚本にケラさんが参加してまして…ホントにしてるんだよなぁ…⁇
ストーリーが破天荒なのは、作品のトーンに合っているから別に問題では無いのですけど、キャラクターの台詞、しゃべり言葉がなんとも不自然。例えば、スターダストブラザーズの旅の成り行きを見つめるフラワーガール3人組“天使”というキャラクター。台詞の調子が完全に“50代のおっさんが考えた若い娘さん”なんですよね。これじゃあ若者は一瞬で観るのやめちゃうよ…。
カンとシンゴが女体化するくだりからも感じられたのですけど、“星くず兄弟”って基本的に男の子の為のボンクラ人情話みたいのばっかりで、女性らしい感性が欠如しているような気がします。「それだから面白い」って方もいるでしょうけど、「イチャイチャ勝手にやってろ」って気もしちゃう。それを踏まえてのラストの展開なのかもしれないけど…。
前作に引き続き、今回も超豪華なゲストが山盛りです。やっぱり枚挙に暇が無いので、気になったらwikiなどをご参照いただくとして、個人的にどうにもモヤモヤしてしまったのは、ゲストが全員監督と同年代かそれより上の世代なんですよね…。新しい世代の面白い事をやっている人たちは監督のアンテナには引っかからなかった?そもそもの成り立ちがキャスト・スタッフとファンの同窓会みたいな物なのかな…?

……。
とっても悩ましいです。率直に言えば“薄ら寒い”映画なのだけど、それこそを待っていたような気もする。例えばおんなじ話をクドカンが撮ったらちゃんと面白くなりそうだけど、“星くず兄弟の伝説”にそんな事求めて無いような…。
惨めさや、侘しさや、誇らしさや、諦めの悪さ、その他諸々が綯い交ぜになって胸を締め付けてくるこの感覚こそが、星くず兄弟の代え難い魅力なんだろうな。どんなに無様でも何度でも再起しろ!過ぎてしまえば、全て良い思い出。なんせまだ、生きてるからね。


マイク片手にウインクきめて
元手いらずの楽しいR&Rビジネス
オレ達ゃ双子でとっても強くて (何が?)
セクシーなスターダスト・ブラザーズ

まったく世間は冷たいもので
いつの間にやら落ち目の連続ヒット
オレ達ゃ双子で運が強くて (運が弱くて)
セクシーなスターダスト・ブラザーズ

本当だぜ 二年前の話さ
写真を見てくれよ
本当だぜ オレ達さ
思い出してくれよ この顔を
♫👯‍♂️(星くず兄弟の伝説 歌詞より抜粋)

因みに!
今作で一番大笑いしたシーン。クラブでDJブースから降りてきた完ちゃんにリリーフランキーがにこやかに寄ってきて…
リリー「なんか有る?」
完ちゃん「無いってw」
リリー「なんか持ってない?」
完ちゃん「無いよぉーw」
リリー「うそうそ、ちょ、ちょうだいよw」
かんか「無いよ!!」
…リリーさん酷い!!!台本の訳ないよね?この作品のリアリティラインからすると、その遣り取り無駄にリアル過ぎるよ!


書きたかった事、他にもあったはずだけど忘れちゃったな。こっちもだいぶヤキが回ってるって事です。…では、暫しのお別れ。次の30年後再びお会いしましょう。狂おしいほど愛してます、星くず兄弟。どんな姿になっても覚えています。またね。
☆彡★彡