ベルサイユ製麺

タリーと私の秘密の時間のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)
3.3
分かる方には「分かる!!!!!」なのではないかと思うのですが…、一見クセの無さそうな作風っぽく見えるジェイソン・ライトマンが、実は苦手だという方が一定数居 …ますよね?

はいはーい!苦手でーす!もう『サンキュースモーキング』から、“独特な道徳観・価値観を押し付けてくるアレクサンダー・ペイン”って感じでなんか苦手だなーって思いながら、でもずっと観てる…。これひょっとしたら一転して凄く好きになる可能性が有るって事では?それは今⁇
またもや観ます!!


もう本当に臨月間近かという程にお腹の大きな女性マーロ。子供部屋に降りてきて、幼い男の子ジョナの体に優しくブラシをかけてあげている。
ジョナは大変な聞かん坊、…というかどうやら発達障害のようで、いきなりコントロール不能になって暴れ出したり泣き出したり…。その事で学校から呼び出され、やんわりと圧力をかけられ精神を擦り減らすマーロ。旦那は穏やか…と言えば聞こえは良いが、子供を可愛がるだけで叱ったりは出来ない子供じみた人。そして多分それはこれからも変わりそうに無い。マーロは疲れ切っている…。
マーロの兄クレイグの夫婦はとてもリッチで、生活の全てがマーロたちと違う。ある日クレイグは費用は出すし、良い人を紹介するから“ナイトシッター(夜間だけのベビーシッター)”を雇えと言う。

マーロのストレスフルな日常は、出産後の子育て、ジョナの放校などを経てピークに!
…宗旨には反するもののナイトシッターの提案を受け入れることにした。

或る晩、グダグタの状態のタナーの元を訪れた若い女性。…センスの良いカジュアルな服装、柔和だが知性を感じさせる表情、話し方。ナイトシッターのタリーだ。彼女は恐るべき勘の良さ、手際の良さ、感じの良さetcで、あっという間にマーロを夜の育児のストレスから解放した…ばかりでは無く、散らかった部屋をいつの間にか片付けてくれたり、カップケーキを焼いておいてくれたり、挙げ句の果ては、すっかり女性としての歓びを無くしかけていたマーロを再び瑞々しく蘇らせた。しかしさ…。


いったいタリーって何者なの⁈
っていうお話しです。ストーリー長く書きすぎたな。

マーロにシャーリーズ・セロン。…その他の人は、誰でしょう。てへへ…。
まあ、セロンの役者魂がまたもや炸裂!もうね、ボディはブヨブヨで視線は虚。疲れ切ったお母さんになりきります。世のお母さま方、本当に日夜お疲れ様…と思わざるを得ないですよ。ストレスフルな日常描写のねちっこさもさるものですが、妊娠〜出産〜育児に纏わる、余り映画的に見栄えのしないディテールをこんなにいろいろ見れたのは初めてのような気がします。軽いコメディじゃないんだ、という監督からのメッセージでしょうか?よし、聞き流すぞー。

で、本題の部分は、
…言えることが少ないなぁ。
過去のどのジェイソン・ライトマン作品とも違う構造の映画です。まあ、ザックリ言えばミステリー的な要素が強いという事で。
映画の本数を沢山観てる方なら、どういう事が起こっているのかは割と早い段階で察しがつくと思います。ただ、その現象のロジックが分からない…って、思ってたら!…あちゃ〜。そっち系かー。苦手〜。

うーん。
ナルホド感は有るし、綺麗にまとまっているとは思うんですけどね。ここから何を学べると言うのだろうな…。あ!、それこそがジェイソン・ライトマン作品が人を選ぶっていうことか。ナルホドナルホド。

今回観てて感じたのは、ライトマンは編集テンポが早いってことですね。今のシーンについて考察しようと思ったら次のシーンへ…って感じで、全編あんまり熟考させてくれない。それで洒落たショットや音楽に気を取られてつい良いものを観たような気になってしまう。
映画の奥、本当のジェイソン・ライトマンの頭の中は相当に捻くれ曲がっていて、その反りがたまたま自分と合わないって事ですね。納得納得。
あ、でも、誰の目にも、シャーリーズ・セロンはスゲー!…んだけど、
…そういう役者使うのが、また、ねえ…?