凄いものを見た。なんだか。
ヴィム=ヴェンダース『ことの次第』を思い出したが、こちらはもっと徹底して「逆ハリウッド的」だった。
カラーでなくモノクロで、ズームやパンやクローズアップなし。効果音も音楽もなし。地名を含めた字幕も説明もなし。もちろんナレーションなし。
固定カメラで原則ロングショットなので、はじめ主人公が見つからないシーンも多くあるし、場面が変わってからもしばらく動きがない。
つまり、動画としては退屈なのだ。
でも、何がどうなっていくのか目が離せなくなり、話の展開が気になっていく。
そして、女が手を施す「フィリピンの弱者」たちが、社会の現実を描き出す。日本では『万引き家族』だが、これは全く違う描き方で。
この3時間50分弱の時間も含めて、きわめて印象に残る映画だ。
カメラさえあれば表現できる創作(芸術)とはよく言ったものだ。こういう映画のためにある言葉だろう。
叙事詩なのか神話なのか、はっきりさせないのも興味深い。