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空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎のsacoのレビュー・感想・評価

3.5
「空海の話じゃない、邦題は詐欺だっ!」そんな理由でも世間では酷評のようだ。
これ、空海はホームズ、白楽天がワトソンで楊貴妃の死の謎を解き明かす話で化け猫に祟られるファンタジーらしいって事と原作夢枕獏だと聞き、そうか、空海の歴史話じゃないのね、逆にむくむくと興味が湧いてきた。

百聞は一見にしかず、観て参りました。いやぁ、意外と面白いじゃん!
なんでそんなにこぞって貶(けな)す!?
あ、紛らわしい邦題が悪い....か。

吹き替え版しかないので、固有名詞も覚え難いし、安史の乱や極楽の宴の靴を脱がせるシーンなどや、玄宗皇帝と楊貴妃殺害の件をある程度分かっていないと訳がわからないとの情報だったので、少しだけ調べて観に行った。
そうやって観ると、要の化け猫の怨念も真相が解明されると憐れで切なかったし、
映像的にも超豪華絢爛で、その上楊貴妃の美しさにはうっとり見とれてしまう。
原作はもっと哲学的で深みのある内容らしいけど、映画は良い案配で分かりやすくてミステリーとして充分楽しめたと思う。

惜しむらくは、やっぱり字幕で鑑賞したかったなぁ。
染谷将太や阿部寛の中国語、せっかくだから聞きたかった。
事前に情報を入れておかなければ、楽しめないというのは致命的だが、
日本向けではなく中国向けに作ったのなら、説明不足で話が流れても仕方がないのかなぁと思ったりもした。

ハードルを最低のところに置いていたからなのか、私は退屈することもなくとても楽しめた。
チェン・カイコー監督の美的センスはやっぱり素晴らしい。きらびやかな中で匂い立つ朱赤と白磁を思わせる白が印象的だ。
ただ『覇王別姫』に描かれていたような情念は感じられず、そこだけ残念だった。
saco

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