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THE BATMAN-ザ・バットマンーのRenのレビュー・感想・評価

4.0
バットマン系は『ダークナイト』3部作と『バットマン フォーエヴァー』(奇しくもリドラーが出てくるやつ)、あと『ジョーカー』しか知らずに参戦しましたが、面白かった。劇場で観ないと良さが半減するタイプ。

予習の必要無しにしっかり面白いのは初心者には本当にありがたい....。DCは作品を飛び越えたクロスオーバーはしないといった旨の発表もされているので、その路線 大正解だよと声を大にして言いたい!

劇中の9割が夜(闇)か雨。陰鬱なゴッサムシティの雰囲気満点。バットスーツやその他ガジェットが映って初めて、そういえばバットマン映画だったと気がつく。それくらい本作は、所謂「ヒーローもの」としての風合いは鳴りを潜め、デヴィッド・フィンチャーmeets劇場版名探偵コナンといった出来。

オリジンをばっさりカットされた今作のバットマンは、終始気の触れた自警団として描かれる。彼の登場シーンはどこも意図的にホラー風味もしくはヴィランのそれとして演出。ダークヒーローとかでもない、復讐に身を纏った人間。体と体がぶつかり合う どすっとした肉弾アクションにSFみは一切無く、その辺りも超人間的だった。警察からもしっかり煙たがられているし、見た目はかっこいいけど明らかに浮いているコスプレ感もちゃんとある。

加えて、マスクを装着する(ブルース・ウェインからバットマンに変わる)という行為が、「匿名性」の象徴として際立つ。この「匿名性」とは、我々がSNSなどで顔出しせず(ネットという道具を使って武装しながら)発言・書き込みしているこの感覚とほぼ変わらないという意味。素顔を隠しながら違法脱法なんでもありで悪に鉄槌を下すウェインを目撃してしまった以上、ヒーローの定義から今一度考えないといけないのかもしれない。
コミックの雰囲気に近いというファンの声もあるようなのですが、実際そうなのでしょうか。

自分の中の不安・劣等感・復讐心が爆発した男がヒーローに堕ちていく物語、という意味では確かに『ジョーカー』と対になり得る作品。だから「ジョーカーを超える衝撃」はある意味で間違っていてある意味で合っている。

その他良かった点は、
○ バットマンが自分のガジェットを使い慣れていない感じが面白い。高所でちゃんと躊躇うし、ちゃんとしくじるダサさがある。
○ カーアクションが好き。「ヒーロー映画」なら純度100%でかっこよくなるシーンだけど、舞台設定を現実にぐぐぐと寄せた瞬間にただの危険・迷惑・加害運転に成り下がるという真理がある。
○ 完全暗転の中のアクションがめちゃくちゃかっこいい!発砲の度に火花で照らされる。黒が肝の作品であり、自宅で観たら良さ8割減なので、劇場もっと言えばドルビーシネマ推奨。

不満点は、
○ せっかく謎を操るリドラーを敵役として登場させたのに、「解く」快楽がほぼ無かった。
○ リドラーの正体に迫る「ために」ナイトクラブからファルコーネ、ペンギンへ....となるのですが、この「ために」のパートが多く、ティザーでゴリ押しされていたリドラーや謎々要素が思っていたより少なかった。
○ 総じてリドラー周辺の描き方はちょっと消化不良。
○ キャットウーマンの活躍と動向はもっとあっても良かったかも....。そのぶん、バットマンの内面描写に注力されてはいたけども。
○ バットマンが滑空するシーンのカメラワークちょっとダサくない?CCDカメラつけた芸能人がバンジージャンプやるときのそれじゃん。

個人的に、世間の評価の割に特にハマらなかった(昔一回観ただけのあやふやな記憶)『ダークナイト』三部作よりも好みな感じではありそうだったので、シリーズ化されるなら追っかけていきたい。
そんでエンドロールにMCU作品にも出演した某俳優の文字があって、あれ出てたっけかと思案していたけどあいつか....‼︎
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