ずどこんちょ

わたしたちのずどこんちょのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
3.7
小学校4年生のひと夏の思い出。
と言っても、テーマは少女たちの友情といじめです。リアルで心を掴まれる映画でした。

クラスで浮いた存在だった少女ソンが、夏休み前に転校してきたジアに出会います。夏休み中にジアと友達になってよく遊んでいたソンでしたが、夏休みが明けた時、ジアは塾で知り合ったいじめっ子サイドのグループと仲良くなっていたのです。

小学校時代、仲良くしていたはずの友達との些細なきっかけによるすれ違いは誰しも共感でき、胸が苦しくなります。ちょうど単純な友情関係から、それぞれの思いが複雑化していく関係へと変わる時期。距離が離れ、どうしてこうなったのかも分からず、解決方法も分からず、言葉を交わすことなく時を過ごすのです。
本作では少女たちのいじめだけではありません。携帯を持つ子供と持てない子供、色鉛筆が買えないなどの家庭環境の貧富の差や互いの親たちの不安定な事情も描かれており、それらもいじめの要素として絡み合ってきます。
友達だった頃にもらった色鉛筆を返せと迫られるシーンは切なくて苦しい場面でした。たかが色鉛筆ですが、彼女にとっては友達からもらった宝物だったはずだから。

とにかく、子役たちの表情が良くて。
特に主人公ソン役の女の子の表情が完璧!いじめられて孤立しても、泣いて取り乱したり悔しさに顔を歪めることはないんです。それはここで崩れたら負けになるという最後のプライドで、口を真一文字に結んで下を向くばかり。
なのに、ジムに対してははっきり物を言います。感情的に怒って剥き出しの本音でぶつかっていく。仲が良かったからこそ、悔しさと悲しさが怒りに乗ってぶつかっています。
とてもリアル!子供たちは表情に乗せなくても、大波のように揺れ動く感情を内に秘めているのです。
思い出します、あの頃の複雑な感情。でも、これなかなか親や周りの大人には言えないんですよね。口にしたら涙が止まらなくなってしまいそうで。心のダムが決壊しそうで言葉も感情も溜め込んでしまう。それもまた成長へと繋がっていくわけですが。

そして、伏線の張り方もお見事でした。
ドッジボールで味方から追い出される伏線が繋がるのも見事ですが、
何よりソンの深い悩みを解決に導いてくれるのが、まさか彼だったとは!!
そういえば映画の前半からずーっとあいつ喧嘩して怪我してたな。優秀なやつ。「じゃあ、いつ遊べばいいの?」って最高の名言が突き刺さりました。実は、監督の知り合いの子供から実際に聞いた言葉なのだとか。大人が作った言葉じゃないからこそ響きます。