Oto

blank13のOtoのレビュー・感想・評価

blank13(2017年製作の映画)
2.8
クズな父に苦しめられる家族という超ベタな物語がどう収まるのか気になって見ていたら、まさかの「ドキュメンタル」のようなフリースタイルコント。原作は40分のコントだと聞いて納得。

今泉監督がよく「俳優が笑わせようとすると観客は笑えない」と言ってるけどその典型。くっきー!、佐藤二朗、永野、ラバーガール…まずキャスティングがコテコテ過ぎて「これから笑わせまっせ〜!」を出し過ぎてる。しかも、後半で初登場するキャラばっかりで置いていかれるしかない展開。リリーさん亡くなってるから、意外な一面の発露にすらなってない。前半で登場してる人物を生かさないと。ウェットな感動にもシュールな笑いにも到達せず中途半端。

優し過ぎて我が身を滅ぼした男、という『すばらしき世界』に近いことをやりたかったんだろうなと思いつつ、どんなときも真面目に生きられない宿命を描きたいのだとしたら、『浅草キッド』とか山下敦弘作品のように狙わない方が良かった。芸人をキャスティングするなら意外な使い方をしたほうが良いのかもしれない。

前半と後半の落差による笑いを狙ってるんだろうけど、前半がフリとして機能していないから、2本の全く違う短編をくっつけただけに見える。コメディだったらそう振り切って、ツカミの笑いをなるべく早く取るべき。笑っていい映画という認識の合意が取れないままボケてるのでスベってる。

13年越しの真実、ということだと、『きっとうまくいく』とか成功例だと思うけど、謎めいた人物像は徐々に明かしているし、その過程で笑える描写が多かった。映画の笑いとコントの笑いはやっぱり違うのだと思う。単純に尺の違いもだけど、まず笑える作品だという前提の共有がないことに意識的にならないといけない。

シネフィルなら面白いものが撮れるというわけでもないことも改めてわかるし、俳優の力で成立しているような映画。
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