えむえすぷらす

氷菓のえむえすぷらすのレビュー・感想・評価

氷菓(2017年製作の映画)
1.0
 大筋は原作通り。時期も原作通り(アニメ版は放映年に合わせて変更していた)。

 こんな謎解きがあるのかとの感想も見かける。「日常の謎」ミステリーなのでジャンルとして確立されてます。また京アニが作ったアニメ版は素晴らしい出来で人気もありますね(2017年11月3日現在Netflixでも見られます)。



 原作は安楽椅子探偵ものの変形で登場人物の動きは少なく論理と資料が主体で話が進む。あまり映像化には向いてると思えないのですが京アニが手掛けたアニメ版は物語は変えずに千反田えるの「私、気になります」描写などアニメらしい表現を入れる演出で原作を生かした。

 本作は4人のルックはアニメ版準拠。16〜17歳に見えない。高3ならまあと思いますが高1ではちょっとどうかと思う。

 良かったところは1967年に何が起きていたか推測する際の関谷先輩の服装を推測した人に合わせて変えている所。ただそれならその中で見ている人もその推測者にすべきだったのでは(奉太郎だけ過去推測シーンでの主観者として出てくる)。
高山ロケシーンも多かったのも重要。これも危惧していた点だったので良かった(特定のロケ地がある原作無視して栃木オールロケもよくある展開なので。日本の多くの作品は関東エリアからほど近くいろんな町を再現できる栃木県佐野でロケされている事が多い)



 ここからは問題点を挙げます。要所要所で棘となる改変が為されている。

1. 金庫捜索での突き飛ばし。彼がそんな事するか?(テンポを上げれば壁新聞部のエピソードはフルに入れられたはず。あと地学教室で薬品庫って?改変が甘い)

2. 千反田邸での「トイレ」勝手に人の家で私室?(物置?)に入って考え事とか彼がそんな事をするか?

3. 摩耶花の帰り道の台詞。原作での彼女の挑戦を知ってるとあり得るかと思う。才能の有無で挑戦するものではなく、それでもやり続ける事が問われる選択のはず。何かを目指す人に対して才能とか一握りの人がとか一番言っても意味のない事を平気で言わせている。

4. ある建物については重要なカギを握っていた訳ですが、奉太郎がある発見をした時にそれを分かるように見せてないのは観客に謎解きをさせる気がなく驚かしに使ってしまっていた。ミステリーなので証拠は提示されなければならない。根本的ミス。

5. 1967年のある出来事からの「あだ名」からの展開。いくらなんでも無茶苦茶。原作通りで良かったのでは。

 映画化は何も第1作である必要はなかった。文化祭の2日間を描いた「クドリャフカの順番」からでも良かったのでは?脚本と演出に疑問の残る実写化だったのは残念でした。