岡田拓朗

gifted/ギフテッドの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
4.2
いちばん大切なのは、<愛する>才能。

感動するに決まってた。
特別な子だからと言って特別扱いしない、こんな人生を歩むべきだということを押し付けない。

その人の人生や選択を、いくら家族だとしても、近しい間柄だとしても、他の人が決定する権利なんてないはずで、自分が望み、好きなように生きるという当たり前で普遍的であるべき生き方や考え方の大切さを、今一度実感できた作品。

メアリーは幼い頃に母親ダイアン(フランクの姉)を亡くし、叔父のフランクに育てられていた。
彼女は母親ダイアンの影響もあり、天才的な頭脳の持ち主で、7歳のときに担任教師のボニーを驚かせるほどの数学の才能(ギフテッド)を見せた。

この数学の才能から祖母のイヴリン(フランクの母)は、ダイアンと同じように数学者としての道を歩ませるのが正義であり、一番であると決め込み、ダイアンもそれを望んでいたとのだと思い込み、フランクとメアリーらの暮らしに入り込んで、何とかそちら(優等生)への道に誘導しようとし、裁判沙汰にまで発展する。

様々な立場の人たちがそれぞれにメアリーのためを思って考え悩み、それぞれの正しさを訴えていく。
特別な子と言われて一目置かれたりすることなく、メアリーが愛されるのは関わる人たちの温かさももちろんあったが、メアリー自身もとても温かくて優しくて自分に正直に正しくあろうとしていたからに他ならない。

その反面、そんなメアリーのことをちゃんと知らずに向き合うこと、見ようとすることをしない大人たちはすぐにこうすべきだ、というべき論を並べたがる。
それもメアリー自身のことを深く考えずに、「特別な子」として一括りにすることですぐに問題を片付けようとする。
そんな一筋縄で行くはずもないに決まってるし、メアリーがそれを望んでいるわけでもないのに…大半の無理に私立に行かせようとする親もその傾向は強いんじゃないかな。

幼い頃から勝手に道を決められてその道しか知らないまま大人になっていく人生と、色んな世界を見て色んなことを知って色んな人と出会ってその中で自分のやりたいことを見つけたり、たくさんの普遍的な楽しさや幸せと出会ったり、もちろん苦しいことや辛いことや乗り越えないといけないこともたくさんある人生。
どちらが本当の正しい人生なんだろう。
メアリーにとっての正しさはどっちなんだろう。
物語の大半がここに執着してる。

基本的に人は見ることや知ることや触れること、そしてやってみることでそこに興味を持つかどうかを判断できる土台に立てる。
だからそんな経験がない事柄に関してはそもそも興味を持つはずなんてないわけだから、そういう意味では支配しようと思えば簡単なのだ。
数学しかやらせなかったらそりゃあ数学に没頭するだろう。

でもメアリーは支配されることではなく、自らで選択しながら歩める人生を望んでいた。
色んなことをして、色んなことに触れて、色んな人と出会う人生。
というよりもそうなって欲しいと願っていたのが、亡くなった母親ダイアンであり、その意思を受け継いで、大切に育てていたのがフランクだった。

そんなダイアンやフランクの想いに触れたり、メアリーを知ることで変わっていく周りの大人たち。
大人たちに振り回されながらも自分の芯を持ち、本当に大切な人やことをブラさずに成長するメアリー。
葛藤を抱えながらもメアリーに向き合って常に正しい選択をしようと突き進むフランク。

結局それぞれがメアリーを想って意思決定する形に終着していくこの物語の温かさと深さにラストは泣けた。

愛することや人としての温かさを保つことって大きくなればなるほど難しくなるんだろうなと。
それが今の社会の縮図で、できる人とできない人が競争社会の中で、できる人が気持ちよくなってそれが正しさになるから、できない人を見下したり支配したりするようになる。
そういうのがいじめやら嫌がらせやらに発展していく。
集団になると、逆にできないが固まってできるを攻撃するような逆転現象が起こったりすることもある。

そもそも正しさなんてわからないし人によって違う中で、人に優劣をつけること自体がおかしくて難しいこと。
個性があって、得意不得意があるのは当たり前で、なぜそれがもっと普遍的にお互いに認め合えるようにならないのかなーと、今作を見てより思った。
そういう意味でメアリーはすごく素直で自分に正直なだけだったし、自分が正しいと思うことやしたいことをしていただけだった。

こういう純粋な気持ちを持っている子はたくさんいるのに、社会や大人がそれを変えていってしまってる自覚は持たないとなーと。
賞賛される子はとことん賞賛されて、見向きもされない子や怒られ続ける子もいる。
でもその子の中にも正しさや認められるべき個性がある。

そういうのをもっとフラットに認め合えた上で、それぞれが自分らしく自分の選択をし、自分の人生を歩めるのがいい。
そんなことを考え直せる素敵な映画だった。

でもこんな考え方も一つの考え方でしかない。
岡田拓朗

岡田拓朗