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メアリと魔女の花のYMKのレビュー・感想・評価

メアリと魔女の花(2017年製作の映画)
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鑑賞日17.07.18
「日本の夏はジブリ」を観て大人も子供も楽しむパターンが近年成り立たなかった。「子供と観に行けない」、「子供が退屈した」、「子供に見せられない」など子供を盾にして良質な作品そのものに目を向けようとしない親御さんが多過ぎた。

『崖の上のポニョ』以降その傾向は顕著に表れて、『借りぐらしのアリエッティ』ではダメ、『コクリコ坂から』でもダメ、『風立ちぬ』でもダメ、『思い出のマーニー』でもダメ。総じて「最近のジブリは子供と観るに値しない」と判断されてきた。

ジブリの制作部門解散に伴い、スタジオポノック設立。そして今回、長編第1作品として見事、子供と大人が一緒に観れる作品が完成した。待望だった親御さんたち、おめでとうございます。アリエッティやマーニーでボロクソ言われた米林監督に対して、みるみる手の平が返っていきます。

ナウシカ、トトロからジブリで育った人間としては、今回の米林作品は非常に複雑。幼少は宮崎作品の壮大な表現に心掴まれ、学生時代はアリエッティやマーニーでメッセージ性が強い後味を受ける。歳を取るごとに常にジブリ作品が心理的にマッチしていった世代だからかもしれない。

だから米林監督=今回のような活発ファンタジーは自分の中であり得なかった。加えて知名度の高い著名人キャストの声優陣と主題歌という大衆意識の姿勢、事前の映像だけでも伺える過去ジブリ作品の既視感のオンパレード。いろんなものの足し算で作品だけを見れば、こちらが求めるものとは違うとはっきり分かった。

しかし、昨年の製作発表会見(http://www.ponoc.jp/news/20161215/)では『魔女の宅急便』ではない21世紀の魔女作品をつくると意気込んでいたし、それで育ったように、今度はメアリが今の子供たちを育てるんだというメッセージが実際観ても伝わる内容だった。ここで自分が何を言っても意味を成さないくらい、価値ある感想はジブリを知らない子供たちが持っているということ。

エンドロールの「感謝」の項目にジブリ御三家の名前が表記されていることから、スタジオポノックが正統に遺伝子を引き継ぎ、叱咤激励を受けたことは間違いない。ジブリで育った人間としてこの作品に対しては、面白かった、面白くなかったというよりも、そんなロマンを体現してくれたことについて心から祝福を送りたい。
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